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「リーダーシップは学べるのか問題」を考える

ルバート代表の松上です。前回のブログでは、「マネージャーになるまでマネジメントはやらない問題」をテーマに、マネージャーのマネジメントスキル向上のためのポイントについて書きました。今回はマネージャーにとってもう一つの必須スキルである「リーダーシップ」について書きたいと思います。

 

リーダーシップとは何か

皆さんは「リーダーシップ」と聞いた時にどのようなイメージを思い浮かべるでしょうか。「カリスマ的魅力」「人の心を動かす力」などを思い浮かべるのではないかと思います。リーダーシップには様々な定義がありますが、前回も引用したハーバードビジネススクールのコッターの考えは広く受け入れられています。

コッターは、リーダーシップを「変化への対処と変革への推進ができること」と定義しています。具体的には①ビジョン・戦略の提示、②人心の統合、③動機づけの三つがリーダーシップの要素として挙げられています。

 


 

このリーダーシップの要素を見ると、マネジメントスキルと補完関係にあることに気付きます。まず、リーダーシップを持ってビジョン・戦略を描き、マネジメントスキルを持ってそれを計画・予算策定に落とします。そして決まった計画と予算に従って、組織編成と人員配置(マネジメントスキル)を行い、コミュニケーションで人心の統合(リーダーシップ)を図る。そして最後にメンバーに動機づけ(リーダーシップ)をして、実行局面では統制と課題解決(マネジメントスキル)をしていく。

こうして見てみると、構想力、イメージ力、コミュニケーション力など、いわゆる右脳的なスキルがリーダーシップで、管理系の左脳的なスキルがマネジメントスキルということになります。日本でマネージャーを「管理職」と呼ぶのはどちらかというとここでのマネジメントスキルを意識しているからだと思います。

 

リーダーシップは学べるのか

リーダーシップはその人の特性や性格によるもので、学ぶものではないという主張をよく聞きますが、ここに挙げられた三つの要素、「ビジョン・戦略の提示」、「人心の統合」、「動機付け」は果たして学べるものなのでしょうか。

結論から言うと、「人心の統合」、「動機付け」の部分は学べるものだと私は考えています。どのようなタイミングでコミュニケーションをすれば良いか、どのような伝え方だと伝わるかなどは、自分自身を振り返っても上司や同僚のやり方を見て学んできた部分が大きいように感じています。

また、「人心の統合」や「動機付け」についてはスキルとして体系化されているものを学ぶ機会もあります。コミュニケーションという意味ではアサーティブコミュニケーションやストーリーテリングの手法がありますし、動機付けの部分でもフィードバックやコーチングの手法もあります。これらを書籍や研修を通して学ぶことでレベルアップすることは可能だと感じています。

一方で、「ビジョン・戦略の提示」についてはどうでしょうか?私は特にビジョンの部分については学ぶことが難しい領域だと思っています。「人心の統合」や「動機付け」というコミュニケーションはあくまでも「How」の部分、つまり手法なので、学んだことが使えます。しかし、ビジョンは「Why」や「What」の部分、つまり中身に関わるので、人から教わった借り物の内容では人の心に伝わるものにはならないと感じています。

例えば、「うちの部署は会社が目指しているこのビジョンと目標を目指してやっていく。」というメッセージと、「私は色々な人と切磋琢磨する中で育てられてきた。だから、この部署をメンバー同士が切磋琢磨し高め合う、そういう部署にしていきたいと思っている。これは会社の目指しているビジョンにも重なるところがあると思っているので皆で目指していきたい」というメッセージ。どちらに熱量を感じるでしょうか?私は後者に熱量を感じます。

前者の「会社のビジョンを目指す」という言葉には、どこにも「その人らしさ」がなく、共感する部分が乏しいのです。自分のビジョンではなく、借り物のビジョン(ここでは会社のビジョンだけ)を語る人に人は共感しにくいのです。会社のビジョンと共に自分の体験から自分なりのビジョンを語る、これがリーダーシップには不可欠だと考えます。

 

自分にビジョンはあるのか?

自分には部署をこうしたいとか会社をこうしたいとかそういうビジョンは特にない、と感じられる方もいらっしゃるかもしれません。そして、それをもって、「自分はリーダーに向いていない」と感じる方もいるかもしれません。ビジョンがないからリーダーに向かないという考え、皆さんはどう思われますか?

私は自身の経験から、ビジョンがない方はほとんどいないと感じています。単にビジョンは一人一人の中に埋もれているだけだと感じています。

ルバートではコーチングを通して、多くの企業の社員と対話を繰り返してきました。コーチングの対象者は自分のビジョンが明確ではないという方がほとんどでした。ただ、コーチングの中で、「将来の自分はどうありたい?部署・組織がどうなっていると良い?」という問いを様々な角度から行うと、少しずつですがその人なりのビジョンが出てきて、語ることで深まっていくということが起きてきました。

そして、数回のコーチングを終える頃には自分なりのビジョンを描き、それに向けて行動を開始しているという方がほとんどでした。自分なりのビジョンに向けて行動し始める、その時点でマネージャーでなくてもその人はリーダーシップを発揮し始めていると考えて良いのではないでしょうか。

私はこのような経験から、人それぞれビジョンは心の中にあると考えます。ただ、問題があるとすれば、ビジョンを掘り起こす場、深める場、発信する場が日常の中にないということだと感じています。

 

まとめ

今回はマネジメントに引き続き、リーダーシップが学べるものなのかというテーマを扱いました。「ビジョン」という学ぶことが難しい部分はあるものの、ビジョンを作るための機会を意図的に作ることによって、リーダーシップは育成できるのではないかと考えています。

特にリーダーシップの発揮が必要となるマネージャーについては、マネージャーになる前の段階で自分なりのビジョンを深める場を作り、準備をするということが私は重要ではないかと感じています。

マネジメントスキルとリーダーシップを計画的に磨き、準備することができれば、マネージャーになった時にスタートダッシュが切れて、より組織や部署に活力が溢れてくるのではないかと私は考えています。