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新たな環境を乗りこなしていくための処方箋

≪目次≫
1、ご相談事例
2、変化に対処する処方箋①
・不安を引き起こしている「移行」
・変化に対処する処方箋①役割の再定義
3、変化に対処する処方箋②
・変化に対処する処方箋②ポジティブインテリジェンス
・2つの心の状態

本記事の執筆者
山崎 奈央Nao Yamazaki
  • 国際コーチ連盟認定PCC(Professional Certified Coach)
  • CTI認定 CPCC®(Certified Professional Co-Active Coach)
  • 一般社団法人ワークショップデザイナー開発機構 認定ワークショップデザイナー

4月は新しい期が始まるタイミングで、会社でも組織の改編がある時期ですね。それに伴って職務役割や職務内容が変わるという方も多いのではないでしょうか。
新たな始まりに胸を躍らせることもあれば、漠然とした不安、両方の気持ちを持っている方もいらっしゃるかもしれません。
今回は、そんな変化のタイミングだからこそ自分の感情や心と向き合って味方につける方法についてご紹介したいと思います。

1、ご相談事例

「最近思うように気持ちがのらなかったり、なんだか上手くいっていないような気がする。すぐにでもこの状態を解消して、目の前のことに集中できる状態をつくっていきたいです。」

この方は、数カ月前から管理職となり新たなポジションでマネジメントにあたられている方でした。自分にとって今の仕事に挑戦することに価値を感じながらも、なんだかうまくいっていない感覚があり、焦りを募らせている様子でした。

2、変化に対処する処方箋①

● 不安を引き起こしている「移行」
まずはじめに、このようなタイミングで不安になるのは当然のことです。キャリアや発達心理学の領域ではこのような職務役割、仕事のミッションが変わって不安を感じる状態の時、私たちは「移行」を経験しているといいます。このような移行時期にはアイデンティティ(自我同一性)が揺らぎ、その揺らぎが不安を生み出しています。

たとえば職務において、私の役割は何か。だからこそどのように判断し、振る舞い、発言するか。という、自分が何者かという自己認識、価値観、思考、行動が新たな状態に追いついていなかったり、取捨選択できていない状況を経験しています。一方、移行の前の状態では私たちはある種の「安定」を経験しています。この安定な状況から変化が生まれた不安定な状態から、また安定な状態に行くためには新たなパターンを構成していくことが必要です。

● 変化に対処する処方箋①役割の再定義
セッションではまず、新たな役割の自分を定義していきます。

例えば以下のことについてひとつひとつ対話しながら整理していきます。

・役割・成果の整理
周囲からの期待・職務上のミッション、マーケット・組織で起きている外部の目と、自分がここまで取り組んできたこと、引き続き取り組み貢献したいことを言語化していきます。その上で、これまでの役割の自分と変わることは何かを考え、継続すること、手放すこともあわせて整理していきます。

・到達したい状態・ビジョンを描く
今の職務に関わることで、組織、ビジネスにおいて実現したい状態を描き、組織や周囲に発信するメッセージを言語化していきます。

・職務像
あるべき職務像、自分らしい職務像は何かを考えます。管理職は“現場活動に介入しない”、“手を動かしてはならない”、“相談の全てに答えられなければならない”、”“メンバーの意見や提案を尊重すべき”、“毅然としているべき”など。時に自分のカラーを置き去りにした固定像で自身の強みや行動を制限するのではなく自分の持ち味を活かしたあるべき像なのか、職務像を整理します。

・判断指針
自分が判断するところ、意見を聞くところ、任せることの整理をします。さらに業務上の判断において何を指針に判断するか。選択すること、しないことは何かを考えます。

・仕事の再定義
自分としての現在の仕事の意義を整理します。この仕事を通じて、誰に何を提供しているのか。より高次の視点で自分の仕事をとらえる言語化をします。

・成長課題や目標
上記で整理してきたことに向けて、始めに何に取り組む必要があるか、どのような自分になっていると成長したと言えるかを整理していきます。

整理ポイントを挙げましたが、当たり前のことを書いているように感じるかもしれません。
しかし、新たな職務についたバタバタの中で整理できずにスタートしているケースも多いのが現状ではないでしょうか。整理をした後は、「一緒に話す中で言葉になって整理された。」「向かう方向がはっきりした。」「漠然と不安に感じていたことがクリアになり迷いがなくなった」といった言葉をいただきます。

新たな役割になった時、誰しもがこれまでと違う違和感やこれで大丈夫かなといった気持ちを抱きます。だからこそ、冷静に今段階での整理、言語化をする機会をつくり、自分の中に判断やふるまいの軸をつくっていくことで前に進む力になります。

3、変化に対処する処方箋②

● 変化に対処する処方箋②ポジティブインテリジェンス
セッションの中で扱ったもう一つの処方箋は「不安な気持ちを認めて癒す」ということです。

セッションでは「まず今感じている焦りや不安の状態を、少し言葉にしてみましょう。」
というところからはじめます。
「自分が実務から離れることで技術的に置いていかれたり、メンバーの相談に対応しきれないのではないかという不安があります。」
「うまく部下の数も増えて、これまで担当していた部門から変わるので、頼りにしてもらえるのか、手本となれるのかといった部分に自信を持てません。」
など今感じていること、自分が恐れていることを自分に素直に話します。

ここではポジティブインテリジェンス(Positive Intelligence ※以下PQ)の考え方を取り入れています。
PQは、ポジティブ心理学、神経学、組織学、コーチングの概念を融合させたもので、本来の力を最大限に活用するための能力を指します。
通常私たちが発揮している力は20%程度と言われるくらい、私たちの心の状態によってパフォーマンスが変わります。だからこそ、移行や不安に対処していくときにPQが役に立ちます。

● 2つの心の状態
PQでは、私たちには2種類の心の状態があると考えます。
1つは、自分の行いを厳しく評価し、否定したり叱責したりする状態です。自らにプレッシャーを与え、そこから不快な感情、不安、落胆、ストレスなどを引き起こします。結果、自己防衛的になったり、恐怖心からの行動が誘発されます。

一方、もうひとつの心の状態は、この世のあらゆる叡智を持った存在で、あたたかい心であらゆる結果や状況を、贈り物やチャンスとして受け入れる状態です。
例え失敗しても、自分が素晴らしい人間であることに変わりはないと慰めたり、自分に同情したり共感し冷静さや元気を取り戻させます。結果、問題に素直に向き合うことができたり、創意工夫、新たなアイデアを考えたりする気持ちが開かれ、より良い行動を取れるようになります。

自分にあたたかな共感を向ける
実際、業績面でもPQの高いビジネスパーソンは、PQの低いビジネスパーソンよりも売上が上回ったり、PQの高いCEOのもとで働くチームは満足度が高いといった研究結果も出ています。
自分を鼓舞したり叱咤するだけでなく、自分のネガティブな感情にも幼児や発達過程の学生たちにエールを送るように、共感を向けることからスタートしてみてください。

 

いかがでしたでしょうか?今回は、新しい環境での変化を迎え、焦りや不安定な状態を経験している方に、新たな環境を乗りこなしていただくための処方箋についてお話しました。
自分の気持ちに共感し、落ち着きや開かれた状態をつくってから冷静に一つ一つ指針を整理してみてくださいね。

自分と組織のよりよい変化と成長のために動いていきたいリーダーを心から応援しています。

 

【本記事の執筆者】
山崎 奈央

リクルート社でHRサービスの営業を経験後、人事コンサルティング会社で多数のコンサルティング案件やプロジェクトマネジメント、組織開発・人材育成案件に携わる。個のリーダーシップを引き出すことで個と組織にとって良質で発展的な成長や成果に繋がることを体感する。

2018年にコーチ養成機関CTIジャパンにてプロ資格を取得しプロコーチの道へ。パラレルワーカーとして活動後、出産・子育てを機に独立。現在はパートナー企業とともにコーチング、研修を通じてビジネスパーソンのキャリアやリーダーシップ開発、組織開発を支援している。

・国際コーチ連盟認定PCC(Professional Certified Coach)

・CTI認定 CPCC®(Certified Professional Co-Active Coach)

・一般社団法人ワークショップデザイナー開発機構 認定ワークショップデザイナー