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志が不明確でも大丈夫 – コンサル流、マインドセットによる人材育成術

ルバート代表の松上です。ルバートでは定型業務ではない、プロジェクト型の仕事を担う人材の育成を担うことが多いです。そんな中で、「仕事に対してある程度の意欲はあるが、やりたいこと(will)が乏しく、伸び悩んでいる人材の成長をどのように支援すれば良いか」という相談をよく受けるのでそれについて書いてみたいと思います。

will-can-mustフレームワーク

人材育成の領域では、キャリアデザインをする上で自分の仕事を、自分のやりたいこと(will)、できること(can)、そして求められること(must)に分類して、「will-can-must」というフレームワークで整理することがよくあります。

このモデルは、自分のやりたいこと、できること、そして求められることを考えることで、組織の中での自分が納得しながら活躍できる領域を探すのに役立ちます。そしてこの三つの領域が重なる部分を広げることにより、より充実した働き方になるということがよく言われます。

また、キャリアを描いていく上では、やりたいこと(will)を明らかにすると必要な能力やスキル(can)が見えてくるので、三つの中ではやりたいこと(will)が重要ということがよく言われます。そこでwillを明らかにするための自己分析が重要ということが言われてきました。

しかし、やりたいこと(will)を明らかにすることは実は簡単なことではありません。私自身も自分のやりたいこと(will)は色々な試行錯誤を経て、30代後半くらいからようやく明確になってきたような気がしますし、多くの方は「あなたのやりたいことは何?」と聞かれると困る人が多いのではないでしょうか。

もちろん長期的にはwillは模索していくべきですし、自分のwillに意識的にいることはとても重要です。(willの重要性を理解しているからこそ、当社はコーチングサービスを提供しています)

しかし、なかなかwillが固まってこない若手のうちはどのようにして自分のできること(can)を増やしていけばよいのでしょうか。私はコンサルティング業界に一つのヒントがあるような気がしています。

コンサルタントのマインドセット

コンサルタントは顧客の問題を解決するために、幅広い知識と技術(can)が求められます。しかし、面白いことにコンサルタント全員がこの仕事に対して明確な「will」、つまり強い動機を持っているわけではありません。自分のキャリアパスやキャリア目的を模索するために、コンサルティングという仕事を一種の「社会人のモラトリアム」として利用しているコンサルタントすら一定数いるのです。

このwillが少ない状況でもコンサルタントがスキルと能力(can)を身に着けることができるのは、なぜでしょうか。

私は「mind」、つまりプロフェッショナルな心構えのせいではないかと考えています。私がコンサルタントとして仕事を始めた時に印象に残ったのは先輩たちが強烈なプロフェッショナルマインドを持って仕事に取り組んでいる様子でした。

そしてその姿を通して自分自身にもそのマインドが自然と埋め込まれていきました。新卒から20年ほど経過した今でもそのマインドは自分の中に残っていて、仕事のベースとなっています。そして、このマインドセットは、明確なwillがない中でも仕事を前進させ、人を成長させる力を持っているように感じています。

コンサルタントのプロフェッショナルマインドの具体例

コンサルタントが大事にしているマインドは多岐にわたります。しかし、そのどれもが実行しようとすると結果的にスキルや能力(can)の開発が必要になるものばかりです。いくつかのマインドをここで紹介します。

やり切る気持ち:実施するための条件が揃っていなくても、目標を達成するために全力を尽くすマインド。また、仕事が本来目指す質に到達していなければ、残業が深夜に及んでも絶対にそのレベルを到達しようとするマインド。

手ぶらで行かない:社内・社外の会議で、常に何かその場に提供できるように準備して参加すること。私は会社の忘年会の企画打ち合わせでさえ、先輩たちが何かしら自分のアイデアをスライドかメモに落として準備してきたのに驚いたことがあります。

プロジェクトは必ずスタートダッシュ:プロジェクトは締切が迫っていない初期段階に逆に仕事量を増やして取り組む。これはコンサルタントが経験的にプロジェクトにラストスパートが効かないことをよくわかっているからだと思います。

1人で考えすぎずに聞いてみる:デスクトップリサーチの沼に陥ることを避けて、早めにその業界やテーマに詳しい人に聞いてみる。コンサルティング会社ではプロジェクトが始まるとすぐに「〇〇に詳しい人はいませんか」というメールが社内に飛び交っていました。(今は専門家のマッチングサービスがあるので様子は違うと思います)

現実的な期待:自分自身や他者に対する過度な期待を避けて、計画して、実行するマインド。これは、コンサルタントが、人は楽観的な予測をしがちということを経験から学んでいるからだと思います。

これらのマインドセットは、canを伸ばす上で、willを超える可能性すらあると思っています。またこれらのマインドとスキルが合わさることで大きな成果が出せるのではないかと感じています。

まとめ

人材育成を考える際には、単に「やりたいこと」(will)を見つけることに留まらず、仕事が「どうあるべきか」というマインドを養うことは重要なように感じます。

ただ、このマインドは言って身につくものではなく、仕事の環境によって育まれるもので「先輩社員や上司が背中で見せるタイプ」のものだと思います。もし部下の育成でマインドを重視するのであれば、まずはリーダーやマネージャー層が率先してその姿を見せることが大事なように感じます。

また、このアプローチは、仕事に対して一定の意欲があるが、willが乏しい人材に対しての方法だと思いますので、すべての人に当てはまるわけではないということに留意が必要だと思います。

もし人材育成でなかなか思ったような成果が得られない、そんな時にはwill-can-mustに加えて、mindという観点から自社の人材を見直してみるのはどうでしょうか。