目次:
1.組織のマネージャーが抱える課題
2.WBC日本代表の栗山監督から学ぶ、カリスマでなくても良いマネジメントの姿
3.まずは“自分らしい”ありたい姿を描くサポートをする
4.おわりに
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1.組織のマネージャーが抱える課題
me:Riseでは、様々な課題の解決や目的で企業様にコーチングを活用いただいております。
そこで、企業様からよく伺うのはマネジメントの課題です。
具体的には以下のようなお言葉を伺います。
「新たな取り組みに着手してほしいが、現場は既存業務で手いっぱいの状況になっている。」
「部下とのコミュニケーションがうまく取れていない」
「次期マネージャーやリーダー候補となる部下が育っていない」
言い換えると、
「目の前のことではなく未来に向けた取り組みにも着手してほしい」
「部下と共に意欲的に取り組んで欲しい」
「次期マネージャー・リーダー候補となる人材を育てて欲しい」
という期待があるということになります。
ここ最近、「上司にしたい」とネット上で話題になり、過去の著書が増版され、一人一冊のみと制限される書店が出るほど組織をリードする人物として注目されている人がいます。それが、2023年のワールド・ベースボール・クラシック(以下、WBC)で野球日本代表を優勝へ導いた栗山監督です。今回は、栗山監督から、企業が期待する管理職を育成する方法を探っていきたいと思います。
2.WBC日本代表の栗山監督から学ぶ、オーセンティックリーダーシップ
栗山監督は約6年プロ野球選手として活躍し、ゴールデングラブ賞を1回受賞。その後はスポーツジャーナリストや野球解説者、大学教授のキャリアを歩んだ後、プロ野球監督に就任した方です。選手時代にはほとんどタイトルを残しておらず、コーチや指導者を経験がない中でも、就任1年目でリーグ優勝、その後日本シリーズ優勝、大谷翔平選手を二刀流選手へと育て上げ、今回のWBCも日本代表を優勝へと導きました。
プロ野球選手の平均在籍年数が8年以上の中、栗山さんは約6年とそもそもの野球実績が短く、現役時代の功績を持つ歴代のWBC監督と比べてもエリートコースを進んできた訳ではないことが分かります。
ではなぜ、監督としてそこまで実績を上げることができたのか。
栗山監督の著書「栗山ノート」から、コーチの視点で読み解いた成功のポイントは3つです。
1 長期的視点を持っていること
2 多面的・俯瞰的な視点を持つ習慣を身に着けていること
3 人の話を聞き、信じ抜くスタンスを貫いていること
具体的なエピソードはこちらです。
1 長期的視点を持っていること:
栗山監督は、「5年後でも10年後でもなく、50年後にどう評価されるのか」(出典:栗山ノート 栗山英樹 光文 2019)という視点を持ち、自身の監督としてのあり方を定めているということ。そして選手に対しても目の前の結果ではなく、長期的な目標や活躍を念頭に今やるべきことやその日の試合メンバーを決定することに徹しています。選手が少しでも体調の不調があれば、長期的な活躍を優先して無理して試合に出させないことや、メジャー入りしか選択肢を考えていなかった大谷翔平選手をドラフト1位指名で交渉し入団へと導けたことも、メジャーに行きたいならまずは日本で力をつけたほうが良いといったように、長期的視点を常に持っているからこそできることなのです。
2 多面的・俯瞰的な視点を持つ習慣を身に着けていること:
その時々の出来事や気づきを栗山ノートに書き留め、マイナスな出来事も多面的・俯瞰的な視点で未来に向けた捉え直しをし、自分は次に何をすべきかと自問しながら考えを整理する時間を持ち続けられています。内容によっては、ノートを開いたまま朝を迎えるほど、あらゆる思考を巡らせ内省を深めていらっしゃるのです。
3 人の話を聞き、信じ抜くスタンスを貫いていること:
常に相手の話を聞くことに気を配り、仕事以外のプライベートな話でも相手の気持ちが落ち着き、次の一歩に進めるように話を聞くスタンスを大切にされています。例えば、試合の夜は選手の話をいつでも聞けるように、お酒は飲まないと決めている徹底ぶり。また、コーチが提示してきた指導案に対して違うものが頭に浮かんだとしても技術的な面は信じて任せ、口出しをしないスタンスを貫いています。
そして、1〜3は古典の「四書五経」「論語」「易経」「韓非子」の教えが原点にあることが、栗山監督の特徴です。実際、著書栗山ノートだけでも古典や経営者の言葉が数十記されていました。ソフトバンクの孫正義さんが『孫子の兵法』、SBIホールディングスの社長である北尾吉孝氏は『論語』を経営に生かしているのは有名な話ですが、栗山監督も同じく古典文学を監督業務に活かしていたのです。
以上のことから、プロ野球選手としての実績という面では弱さはありつつも、自身の確固たる信念を持ち、周囲と信頼関係を気づき、常に自らを振り返ることで自身の主観的・客観的理解を高めながら組織をリードしてきたことが分かります。カリスマ的なリーダーでなく、倫理観をもちながらも、自分自身の考えや価値観をもとにリーダーシップを発揮する、まさに「オーセンティックリーダーシップ」を発揮されていたのです。
3.まずは“自分らしい”ありたい姿を描くサポートをする
どのようにすれば栗山監督のようなオーセンティックリーダーシップを発揮した管理職を増やすことができるのか。それは、自分らしい”マネージャー・管理者としてのあり方を言語化するところから始まるのではないかと私は考えます。そのためには、自身の価値観に繋がっている、または共感する言葉を栗山監督のように他者から学ぶというところからスタートするのも良いかもしれません。
マネジメント力向上というと、管理やコミュニケーション力UPなど、スキルに特化したものも多く見られます。スキル取得は効果的であるものの、まずは自身のあり方、ビジョンを明確にすることがマネージャー・管理職としての活躍の近道になることもあります。そして5年10年、更に先の自身がいなくなった世界までの未来を考えた時に、「今どうありたいのか」まで考えることができた時には、栗山監督が持つ視座の高さに少し近づいていけるのかもしれません。
4.おわりに
今回は栗山監督に焦点を当てましたが、指導・監督経験のない栗山さんへ監督のオファーした、当時の北海道日本ハムファイターズ・ゼネラルマネージャー(GM)の吉村浩さんの手腕も見逃せません。恐らく、吉村さんと栗山さんの間でも信頼関係が築かれ、吉村さんは栗山さんらしく監督業ができる環境を作っていたはずです。そしてまた、そこで発揮されたリーダーシップは、吉村さんらしいものなのだと思います。
2023年4月20日に「性格データに基づくコーチングで、この強みを活かすマネージャーを育成する」セミナーを予定しておりますので、ご興味ある方はぜひご参加ください。株式会社ミツカリの代表、表様にも登壇いただき、“自分らしい”リーダーシップ像を引き出す1on1も実践します。
参考文献:栗山英樹 栗山ノート 光文社
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【本記事の執筆者】
井本 仁美
㈱リクルートエージェント(現:㈱リクルート)にて法人営業、新サービス拡充のプロジェクトリーダー、育成に従事し、その後人事系フリーランスへ転身。法人・個人向けキャリアカウンセリング、コーチング業務、研修講師、採用業務、ベンチャー企業での企画業務等を経験。
キャリアコンサルタント×コーチングの知見を活かし、課題解決しながらポジティブアプローチで目標達成を伴走することや、クライアントが発する言葉を大切に扱いその方が持つ価値観や考えの言語化が得意。自己肯定感が上がり、その人らしさに気づくことで自己実現に向けて行動を起こせるセッションと定評あり。
(一財)生涯学習開発財団認定プロフェッショナルコーチ、国家資格キャリアコンサルタント