ブログブログ

外資系コンサルの一子相伝人材育成術

みなさんこんにちは。ルバート代表の松上です。研修をしているとたまに「外資系コンサルの人材育成はどんなスタイルなのですか」と質問を受けることがあるので、今日はそれについて思い出しながら書いてみようと思います。

 

たまに外資系コンサルでの3年で通常の会社での10年分の成長ができるといったことを聞いたりしますが、なぜそれほどの成長スピードが可能なのでしょうか。

コンサルタントの成長スピードについては「コンサルタントとしての研修をしっかり受けるからじゃないの?」と思われる方もいるかもしれませんが、まず前提として、マッキンゼーなどの教育体系が整ったファームを除いて、多くのファームはOJTが中心でした。

実際に私が所属したモニターグループ(現モニターデロイト)での新人トレーニングは10日間ほどで、4月中にすぐに実務に放り込まれていました。では、実務を行うだけでなぜ成長するのか?

成長の一つ大きなポイントは先輩コンサルタントからの徹底的なフィードバックでした。「ああ、フィードバックね」と思われるかもしれませんが、そのフィードバックが普通のレベルではないのです。

資料の構成や論理構成、メッセージの出し方などはもちろんなのですが、ファイル名の付け方、エクセルの関数の使い方、パワポの図形の微妙な位置、配色の仕方、ワードの箇条書きの付け方…もちろん個人差はありましたが、概してフィードバックのレベルが相当に細かいのです。

例えば、私が最初に入ったプロジェクトの場合、先輩コンサルタントと朝から晩まで会議室にこもって一緒に仕事をすることを求められました。そして、私がエクセルでモデルを作成していると、横から私の操作をのぞいて、「その操作、それだと遅いから、このショートカット使った方が速いよ」と操作レベルからフィードバックされるのです。

また、作成したスライドや議事録にも赤ペンで真っ赤になって返ってきます。例えば、スライドで言うと、ロジックやファクトのチェックのみならず、半角と全角のスペースの使い分けまでフィードバックされるのです(なぜかコンサルをやっていると見分けがつくようになるのです)。そして、それをお客さんに出せるレベルまで細かく修正することを求められます。

このような先輩コンサルタントの仕事の仕方をコピーするような細かいフィードバックが続くことで、三カ月ほど経つと、「松上さん、○○さん(先輩コンサルタントのこと)のスライドの書き方に似てきたね…」と周りから言われるようになるのです。

私はこれを「一子相伝 職人型人材育成スタイル」と呼んでいます。寿司職人や北斗の拳の世界ですね。一人一人の弱点を理解しながら、そこを細かくフィードバックして補強していくという、暗黙知を叩き込むのには非常に向いたスタイルです。

ここで恐らくこんな疑問が湧くのではないでしょうか。「忙しいコンサルタントがなぜそんなに新人へのフィードバックに時間をかけるのか?自分でやった方が早いんじゃないか?」コンサルでのプロジェクトは通常3か月で膨大な成果物を求められるため、時間が圧倒的に足りません。通常ならこんなフィードバックは真っ先に省きたいところです。

ただ、時間の足りなさが少しどころではなく、圧倒的に足りないので、自分でこなすには限界があり、新人を早く戦力化しなければいけないというレベルなのです。ある意味、先輩コンサルタントが生き残るため、ワークライフバランスを維持するためには早く新人を育てなければならないという環境から新人の育成が促進されているのです。(もちろんそれだけではない、後輩への愛情も感じていましたが。)

私は今でも、この「一子相伝 職人型人材育成スタイル」は人材育成において非常に効果的だと考えています。フィードバックを徹底的に行いますので、新人のレベルがぐんぐん上がります。

ただ、一点だけ注意すべきことがあるとすれば、コンサルティングの世界では「成長」が大前提なので新人は素直にフィードバックを受け入れていましたが、そういう環境でない場合は予めこのスタイルに合意しておく必要があると思います。また、フィードバックが細かいので、本人が自信を失う可能性があると思いますので、その辺のケアは必要かと思います。

ルバートでは、コンサルタントの暗黙知である資料作成やロジカルシンキング、ワークプランニングなどの手法を言語化して研修にしています。このような一斉研修で方法論を学んだ上で、上記のようなフィードバックによる人材育成を行えば、効果的にスピーディに人材のレベルがアップするのではないでしょうか。

 

※上記内容は10年以上前のコンサルティングファームでの人材育成ですので、現状とは異なると思います。あくまで一つの人材育成のモデルとして参考にしていただければ幸いです。