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なぜ1on1ミーティングが劇的に変わったのか?「部下の話を引き出せない」壁を突破した事例

≪目次≫
1.企業様向けコーチング導入時の目的
2.1on1ミーティングで部下の話を引き出せない管理職のコーチング事例
3.1on1ミーティングで部下の話を引き出す5つの方法

本記事の執筆者
尾上 俊介オノエ シュンスケ
  • AICF認定コーチ
  • 国家資格キャリア・コンサルタント
  • 産業カウンセラー
  • うつ・クライシス専門カウンセラー
  • 心理危機介入カウンセラー
  • 障害者職業生活相談員
 

1. 企業様向けコーチング導入時の目的

me:Rise(ミライズ)では、企業様に様々な目的でコーチングを導入いただいております。導入の背景は組織のフェーズによって多岐にわたりますが、代表的なものは以下の通りです。

(1)社員が自分らしいキャリアを考えるきっかけとする
(2)社員の自律的なキャリア形成を支援する
(3)1on1ミーティング開始に伴い、上司がコーチングを体験し実践につなげる
(4)1on1ミーティングの「引き出し」を増やす

近年、多くの企業が対話を通じた組織活性化を目指し、1on1を導入していますが、現場の管理職の方々からは「やり方は教わったが、実際にどう対話すればいいのか戸惑っている」という声を多く伺います。

今回ご紹介するのは、「(3)1on1ミーティング開始に伴い、上司がコーチングを体験し実践につなげる」ことを目的としたコーチングの事例です。テーマは、多くのマネージャーが直面する「1on1での対話の壁」。ある管理職の方がコーチングを通じて自身の「あり方」を再定義したことで、部下とのコミュニケーションに劇的な変化が起きた実例をご紹介いたします。

2. 1on1ミーティングで部下の話を引き出せなかった管理職のコーチング事例

IT業界でマネージャーを務める山本さん(仮名)。山本さんには、「1on1ミーティング開始に伴い、上司がコーチングを体験し実践につなげる」ことを目的として、3ヶ月間、全3回のme:Riseコーチングをお受けいただきました。山本さんは非常に責任感が強く、チームの成果に対して真摯に向き合う方でしたが、初回のコーチングで開口一番、次のようなお悩みを吐露されました。

「1on1ミーティングの時間が、正直苦痛なんです。部下に質問しても『特にないです』『大丈夫です』という答えが返ってくるばかりで……。話をしてくれている時も、どこか表面的な気がして、本音を話してくれている確信が持てないんです」

部下の育成のために良かれと思って時間を確保しているものの、手応えが得られない。そんな焦燥感が山本さんの表情からも伝わってきました。
※守秘義務の観点から、お名前や内容は一部変更しております。

「理想の上司像」を言語化する

私は山本さんに、スキルとしての質問法を伝える前に、まず「どんな上司でありたいか」という理想の姿を思い描いていただきました。

(尾上コーチ) 「山本さんが理想とする職場では、部下の方はどんな様子ですか?」
(山本さん) 「そうですね……。部下が主役で、私はそれを温かくサポートしているイメージです」
(尾上コーチ) 「素敵ですね。それを何かに例えてみると、どんな感じでしょうか?」
(山本さん) 「例えですか……(少し考えて)。部下が主役、そう、舞台で思い切り演じている主役。私はそれを照らす『スポットライト』のような存在かもしれません。部下が活き活きと演じられるように、最大限に輝かせるスポットライトでありたいです!」

それまでの山本さんは、「自分が正解を教えなければ」「自分が話をリードしなければ」というプレッシャーから、無意識のうちに自分が舞台の中央に立ち、部下を観客にしてしまっていたことに気づかれました。

1ヶ月後の劇的な変化

山本さんは次のコーチングまでの1ヶ月間、「自分は部下を照らすスポットライトである」というイメージを意識して1on1に臨むことにしました。

1ヶ月後のコーチングで、山本さんは晴れやかな表情でお話しされました。

「驚きました。今まで、1on1での発話割合は自分が7割くらいになっていたのですが、今回は自分の話が2〜3割にまで減りました。私が黙ってスポットライトに徹しようと決めただけで、部下の方からポツリポツリと、今の仕事への不安や将来の展望を話し始めてくれたんです」

「スポットライト」というメタファー(比喩)が、山本さんの「聴く姿勢」を根本から変え、部下が安心して話せる空間を作り出したのです。

3. 1on1ミーティングで部下の話を引き出す5つの方法

山本さんの事例からも分かる通り、1on1を機能させるには、単なるコミュニケーションの技術だけでなく、上司自身の「マインドセット(あり方)」も重要です。ここでは、部下の本音を引き出し、対話を深めるために有効な5つのポイントを、具体的なテクニックと共にご紹介します。

① 上司としての「ありたい姿」をメタファーにする

山本さんの「スポットライト」のように、自分らしい上司像を何かに例えてみることをお勧めします。「部下を温める暖炉」「航海を支えるコンパス」「栄養を送る土壌」「部下を活き活きさせる元気玉」など、自分がしっくりくる言葉を持つことで、対話中の振る舞いが自然と変わっていきます。

② 「うまく話せなくてもいい」とハードルを下げる

部下が黙ってしまう原因の一つは、「正解を言わなければならない」という緊張感です。あらかじめ「この場では、うまく話せなくてもいいし、すぐに答えが出なくても大丈夫だよ」と伝えておくことも効果的です。毎回の1on1の冒頭でこうした一言を添えることで、部下は安心して1on1に臨めるようになります。

万一、部下がうまく話せなかったとしても、「今日は一生懸命考えてくれてありがとう。深く考えて疲れたでしょう」と感謝とねぎらいを伝えることで、心理的安全性はさらに高まります。「今度、また聞くと思うけど、その時はまた一緒に考えよう」と次回につなげる一言を添えることで、部下は「この場では考えるプロセスそのものが大切にされている」と感じるようになります。

こうした関わりを積み重ねることで、部下は「答えを出す場」ではなく、「安心して考えを言葉にしてよい場」として1on1を捉えるようになり、徐々に自分の考えや本音を話してくれるようになります。結果として、上司が無理に話を引き出そうとしなくても、自然と対話が生まれる1on1へと変化していきます。

③ 上司自らが「弱さ」を自己開示する

完璧な上司を演じていると、部下は本音(特に弱音や失敗、不安)を話しにくくなります。「実は私も、以前のプロジェクトでこういう壁にぶつかったんだ」といった、上司自身の弱さや試行錯誤を共有することで、部下も「自分も本音を話していいんだ」と安心できます。

④ 抽象から具体へ、ステップを踏んで質問する

質問しても答えが出てこないときは、さらにハードルを下げる一言を添えてみます。 「今の状況を、なんとなくのイメージでいいから教えて」「抽象的でもいいよ」と促します。 「……なんだか、モヤモヤしている感じです」といった抽象的なキーワードが出てきたら、そこで初めて「モヤモヤってどんな感じ?」と深掘りをしていきます。抽象的な言葉が出た後に、「具体的には?」「~ってどういう感じ?」などの具体化の質問を投げかけることもお勧めです。

⑤ 「点数化」で本音を可視化する

「本音を話してくれているか分からない」と感じるのは、不安に思えるかもしれませんが、実はとても正常な感覚です。むしろ、「私の部下は本音を話してくれている」と疑いなく思い込んでいる上司の方が危険ではないでしょうか。「本音を話してくれているか分からない」からこそ、丁寧に関わろうとしますし、どのような質問がよいのかを考え、工夫し続けることができます。

そこでお勧めしたいのが、「スケーリング・クエスチョン(点数化)」です。
たとえば、次のように問いかけます。

「今話してくれた理想の状態を100点とすると、今の話は何点くらいかな?」
仮に部下が「70点です」と答えた場合、続けて
「なるほど。では、残りの30点分には、どんなことがありますか?」
と問いかけてみます。

この質問によって、部下自身もまだ言葉にしきれていなかった想いや、遠慮していた本音が少しずつ表に出てきます。「実はここが気になっていて…」「本当はこうなったらいいと思っていて…」と、対話が一段深まることが多いです。
一方で、「100点です」と返ってきた場合も、そのまま受け取って終わりにする必要はありません。
「もし120点があるとしたら、120点にするには何が加わると思う?」
と問いかけてみてください。
100点という“完成形”の先を想像してもらうことで、部下の価値観や本当に大切にしているポイントが見えてきます。

1on1ミーティングは、部下が自分自身と向き合うことを支援する場です。
今回ご紹介した事例や手法が、皆様の組織における対話の一助となれば幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

   
   

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【本記事の執筆者】
尾上 俊介

サッポロビール、ファミリーマート、リコージャパンにて20年間、人事採用・教育、障がい者雇用に従事。採用から入社後の定着支援まで携わる中で、社員が成果発揮できるようコーチング・カウンセリングを学ぶ。関わった方々が生き生き働く姿が手応えとなり、コーチとして独立。

現在は、会社員・学生のコーチ・カウンセラー、企業研修・大学キャリア講師として活動中。

自身のマイナス経験から築いた「違いや弱みは力になる。どんな自分もどんな仲間も、その人らしく活かす方法」を用いたコーチングを実施している。

・AICF認定コーチ
・国家資格キャリア・コンサルタント
・産業カウンセラー
・うつ・クライシス専門カウンセラー
・心理危機介入カウンセラー
・障害者職業生活相談員