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経営会議に通る企画書とは?~経営の7つの重要ポイントと、提案を通す2つのルート~

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ルバート代表の松上です。冬の足音が近づいてきましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。前回はアウトプットの質を高める思考法として、クリティカルシンキングについて書きましたが、今回は「経営会議に通る企画書」について書いてみたいと思います。

本記事の執筆者
松上 純一郎マツガミ ジュンイチロウ
  • 株式会社Rubato代表取締役
  • 『PowerPoint資料作成プロフェッショナルの大原則』
    『ドリルで学ぶ!人を動かす資料のつくりかた』著者

私はコンサルタントとして働く中で、さまざまな企画書を目にしてきましたが、読み進めても何を根拠に判断すれば良いのか迷ってしまう企画書をたくさん見てきました。また、そのような企画書を前にして会議が進まない場面もたくさん見てきました。

特に経営層向けの資料は、一般的なビジネス文書と同じ作り方をするとほぼ確実に伝わりません。なぜなら、経営が見ている世界と、現場が見ている世界は異なるからです。そこで、経営層に刺さる提案資料とはどういうものか、その資料をどう作れば良いのか、について私なりにできるだけ言語化してみたいと思います。

まず、経営層に提案を通すための「2つのルート」を押さえることが重要と思いますので、まずこの「2つのルート」についてご説明したいと思います。

 

1.提案が通るための「2つのルート」とは?

① 表のルート:経営会議などの会社の正式な討議プロセス

一つ目は、経営会議などの会社の方針を討議する会議体の「表のルート」です。こういった会議で必要な資料は、戦略にのっとり、ロジックが整い、ファクトが揃った、いわば正統派の資料です。企画書の内容としては、戦略との整合性、ロジックの一貫性、データ・ファクトの妥当性、リスクや代替案の準備、複数案の比較検討プロセスの説明など、会議での審議に耐えうる 「穴のない資料」 が求められます。

② 裏のルート:会議前にキーパーソンに説明するプロセス

もう一つは、経営会議にかける前に主要な経営陣へ個別に説明する「裏のルート」です。
ここでは、ロジックだけでは十分ではありません。重要なのは、個人の立場、志向性、価値観、好みとの整合性です。


つまり、提案を通すためには、以下の両面が不可欠です。

裏のルート:事前にキーパーソンへ個別説明し、“温度を上げておく”こと
表のルート:会議の場では十分なロジックで否定される隙をなくしておくこと

今回のブログでは、このうち 「表のルート」に焦点を当ててお話しします。

2.企画書が陥る3つの罠

この「表ルート」の経営会議で討議される企画書でよく陥る3つの罠があります。まずはそれを見ていきたいと思います。

①詳細の説明に終始してしまう

よく練られた提案ほど、詳細の説明をしてしまいがちです。しかし、提案の背景や詳細を丁寧に書けば書くほど、経営層に対して「結局、何を判断してほしいのか」が伝わりにくくなり、討議が停滞してしまうことがよくあります。提案側も経営層も真面目に取り組んでいるだけに、「なぜ相手はわかってくれないのだ」という不信感につながってしまうこともよくあります。

②現場視点の論点に偏る

「困っている」「大変だ」という現場の声は重要ですが、経営層の視点は常に会社の目標達成、投資対効果、実行可能性に向いています。現場の問題をより高い視点から咀嚼して説明しないと経営層には響かないものになってしまいます。

③判断材料が不足している

施策案だけ並んでいても、効果やリスクはどうか、本当に投資回収できるのか、他の案は何があったのか、実行可能性はどうなのか、といった経営層が判断するための材料がなければ経営は意思決定できません。

このような企画書が陥りがちな3つのポイントを押さえた上で、経営層に刺さる企画書のポイントを見ていきたいのですが、その前提として、まず押さえておきたいのが、経営層が経営の意思決定する際に重視している「7つのポイント」です。

3.経営層が意思決定する上での「7つの重要ポイント」

経営層は、日々あらゆる提案や施策を判断しています。その際、施策の一つ一つを精査するのは難しいので、拠り所となるいくつかの基準にのっとって判断しています。それは経営の流れの中にヒントがあります。


経営の流れとは、戦略と組織を起点に意思決定を行い、施策を実行し、成果を上げ、そしてその施策の持続性と再現性を担保していくことになります。

当然経営層はこの経営の流れの中での7つのポイントを重視して経営の意思決定をしています


① 戦略整合性〜会社の方向性と一貫しているか〜

どれほど魅力的な施策でも、戦略と整合していなければ採択されません。会社の中長期方針に沿っているか、戦略の方向性と矛盾していないか、全社最適につながるか、など大きな会社の方向性と一致しているかを経営層は見ます。

② 組織の実行能力〜その戦略を実現できる体制があるか〜

施策が実行できる体制があるかどうかは、戦略と同じくらい重要です。「組織は戦略に従う」、「戦略は組織に従う」という言葉があるように、戦略と組織はコインの裏表と言っても過言ではありません。そこで経営層は、実行体制、人材の質、ガバナンス、関係部署、リソースの充足度、などを見ています。

③ 意思決定しやすさ〜短時間で理解できるか〜

経営層は、短時間で数多くの意思決定をします。そのため、要点が一瞬で理解できる、代替案や比較が整理されている企画を重視します。いくらロジックやエビデンスがしっかりしていても理解するのが難しい、説明が難しい施策は経営層からすると避けたいものになります。

④実行性〜机上の空論ではなく動かせるか〜

どれだけ良い企画でも、実行計画が曖昧であれば意味がありません。リソース、体制、スケジュール、他部署との連携、リスクの管理など「実行できる仕組みになっているか」が経営判断の鍵です。

⑤ 成果〜ROIとリスクが妥当か〜

成果が曖昧な案には、経営層は動きません。期待成果、投資対効果(ROI)、データや根拠、リスクと対応策など、数字と根拠があるかが重要です。

⑥ 持続性〜長期的に価値を生み続けるか〜

経営層は短期成果だけで判断しません。一過性で終わらないか、組織に資産として積み上がるか、全社的な価値につながるか、などストック型の長期的な価値が重視されます。

⑦ 再現性〜他領域にも展開できるか〜

最後に見られるのが「再現性」です。他部署でも横展開可能か、属人的ではなく仕組み化できるか、などの観点で、施策の再現性を確認します。

4.企画書で押さえるべき7つのポイント

上記の経営における意思決定で重要な7つのポイントを理解すれば、企画書で経営層が何を求めているかがはっきりします。以下に企画書で大事な7つのポイントを列挙します。


① 戦略整合性:会社方針と一致しているか

「この提案は戦略上どこに位置づけられる施策なのか」、「全社最適につながるのか」といった問いに答えられるように企画書で説明されているかがポイントです。またこの要素は企画書の最初の1枚で明確に伝えるべきことです。

② 組織:関係部署の整理ができているか

経営層が企画書の中で、どの部署が影響を受けるか、部署間で摩擦が起きないか、などを確認します。たとえ摩擦が起きるとしてもその対策が含まれていることが重要になります。

③ 意思決定:要点が一瞬で理解できるか

経営層はすべての企画をじっくり検討する時間がありません。 そのため、要点を掴むのに時間がかかる資料、比較検討の結果が整理されていない資料、などは即座に優先順位が下がってしまいます。

④ 実行性:現実に動かせる計画か

施策のアイデアは良くても、体制、スケジュール、現場のオペレーションなどが曖昧な企画書は実行性に疑問を持たれてしまいます。経営層が「これなら実現できそう!」というイメージを持てる計画を示すことが肝要です。

⑤ 成果:ROIとリスクが数字で語られているか

成果が曖昧でリスクの整理が甘いというのは経営層が最も嫌うポイントです。特にリスクがない企画というのはあり得ないので、リスクを整理した上でどのような対策を検討したかがわかることが企画書の重要ポイントになります。

⑥ 持続性:長期的な価値につながるか

短期の効率化やコスト削減だけでは経営は動きません。長期的に負荷を減らす仕組みか、
組織全体に資産として残るかといった「ストックの価値」が企画書に示されているかが求められます。

⑦ 再現性:属人性が少なく、展開の可能性があるか

企画の内容が、属人性が少なく仕組み化しやすく、展開がしやすいかは経営層にとって重要な判断基準ですので、企画書の中に再現性の要素を含むことは重要になります。

5.経営会議向けの企画書のサンプル

では上記の内容を具体的に反映した企画書はどのようなものかと気になる方も多いと思います。そこで企画書のサンプルを作成してみました。もちろん上記の7つのポイントを含めるためには企画書は数枚にわたると思います。

しかし、経営会議向けの企画書で最も重要なのは冒頭の1枚で企画の概要を伝えきるということですので、冒頭の企画の概要のスライドを作成してみました。参考にしていただければと思います。



6.まとめ

経営層が知りたいポイントと、現場が伝えたいポイントがズレているために、会議での討議が難航し、経営と現場の不信感が高まる場面を私は何度も見てきました。もちろんどちらの視点も大事で、互いの歩み寄りが必要なのですが、経営層はとにかく短時間で意思決定をしないといけないという制約がある以上、企画書を経営層の知りたいことの観点から見直すことは大事なように思います。

今回お伝えした7つのポイントを意識して、企画書を見直していただけば、経営層にとっての大事なポイントを押さえることになり、経営層と現場のコミュニケーションのスピードが上がり、双方のコミュニケーションでの負担も減るのではないかと思います。

ぜひ次に企画書をつくる際は、この7つのポイントを思い出していただければと思います。次回は企画書を通すための裏のルートについて書いてみたいと思います。

 

【本記事の執筆者】
松上 純一郎

同志社大学文学部卒業、神戸大学大学院修了、University of East Anglia修士課程修了。
米国戦略コンサルティングファームのモニターグループで、外資系製薬企業のマーケティング・営業戦略、国内企業の海外進出戦略の策定に従事。その後、NGOに転じ、アライアンス・フォーラム財団にて企業の新興国進出サポート(バングラデシュやアフリカ・ザンビアでのソーラーパネルプロジェクト、栄養食品開発プロジェクト等)や栄養改善プロジェクトに携わる。
現在は株式会社ルバート代表取締役を務める。組織の変革のためにはスキルとwillの両面からサポートすることが必要という考えから、ビジネススキル研修、そしてコーチングのサービスを提供している。