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職場でのミーティングが活性化する3つの工夫

「ミーティングで、意見やアイデアがなかなか出てこない」
「ミーティングで、いつも同じ人ばかり発言している」
「ミーティングの雰囲気がよくない」

ビジネスとスポーツの現場の両方で、こんな声をよく聞きます。

私はキャリアコーチと並行して、スポーツメンタルコーチとして、学生からアマチュア、プロのプレイヤーまで、幅広い年代の個人競技のアスリートや団体競技のチーム、指導者の育成に携わっています。

ビジネスとスポーツは、人材育成や組織論において非常に関係が深く、コーチングもスポーツの分野からビジネスの世界に伝わりました。コーチの観点でも、人の可能性とパフォーマンスを最大限に引き出し、人の集団であるチームを機能させるサポートするという点で共通点が多いと思います。

さて、今年のWBCで日本代表が優勝できた秘訣の一つとして、複数の組織開発の専門家が、チームの心理的安全性(psychological safety)が確保されていたことを挙げています。心理的安全性とは、ハーバード大学で組織行動学を研究するエイミー・エドモンドソン氏が最初に提唱した概念です。エドモンドソン氏は、著書「恐れのない組織」で、心理的安全性とは「みんなが気兼ねなく意見を述べることができ、自分らしくいられる文化」と定義しています。Google社が生産性向上のためのプロジェクトの研究成果として、心理的安全性が高まると、チームのパフォーマンスが向上することを発表して以降、世界中で注目が集まっています。

また、2015年のラグビーW杯の日本代表のメンタルコーチを務めた荒木香織氏は、あるインタビューで、代表チーム結成当初は目上の人への質問や意見を避ける傾向があったが、「選手は違いを励まし合い、ストレスと前向きな力に変えたのです。あの2時間ほどのリーダーズミーティングが彼らのW杯での3勝につながったのだと思います」と、チームミーティングの重要性について語っています。

これら2つの日本代表チームの活躍を組織の視点で分析した結果から、本質的にチームワークを高めるためには、積極的に情報や意識をチームで共有することが重要だと気づかされます。

そこで、今回は、チームスポーツの現場で実際に行っているミーティングが活性化する3つの工夫をご紹介したいと思います。

 

(1)「二人組タイム」を作る

●チームの課題:試合後のミーティングでなかなか意見が出てこない

ミーティングメンバーから意見やアイデアがなかなか出てこない、という時もあるかと思います。頭の中に意見やアイデアが湧いていても、「まだまとまっていないな」「上手く伝えられるかな」という状態だと、なかなか発言しにくいのかもしれません。

●改善策:「二人組タイムを作る」

「〇〇についての意見やアイデアを、隣の方とお二人で〇分間話してみてください」と伝え、二人で自由に話をしてもらう時間を設けます。自由に言語化してもらう時間を作ることで、自分の考えが整理できたり、纏まったりします。また一度言葉にしてみたことで、全体でも発言しやすくなります。

実際にチームミーティングで「二人組タイム」を設けてみると、様々な意見や次の練習に向けてのアイデアが、先輩後輩を問わず出てくるようになりました。また、二人組を毎回変えていくことで、普段会話の少ないメンバーの考えを知れ、相互理解が深まるようになりました。

二人組の関係性から(先輩後輩、経験値など)、片方の方だけが長く話しをしてしまいそうな場合は、前半〇分はAさんが話す時間・後半はBさんが話す時間と、話す時間を分けて設けます。こうすることでAさんとBさんの両方が話す時間をしっかり確保することができます。

さらに、聞き手の方には、相づち以外は基本「ただ聴いてもらう」ようにお願いをします。こうすることで、話し手の方は自分のペースで、自分の話したいことを話すことができ、よりアイデアや意見が整理されたり、湧き出てきたりします。

また、オンラインミーティングの場合、二人組のブレイクアウトルームを作ることで、同じ方法で行うことができます。

 

(2)アイデアを「見える化」する

●チームの課題:守備の課題について、ミーティングでいつも経験値の高いメンバーが発言している状態

「どうしても同じ人ばかりが発言してしまう」という時もあるかと思います。その理由として、先輩や積極的な人に遠慮してしまっていることが考えられます。

●改善策:付箋にアイデアを「見える化」してチームに共有する

「〇〇についての意見やアイデアについて何でも構いませんので、付箋1枚に1アイデアの形で、〇分間いろいろ書き出してみてください。」と伝え、付箋に書き出してもらう時間を設けます。付箋に自由に書き出してみることで、自分の考えを整理できたり、さらにアイデアが出てきたりします。また、自分の中にあることを俯瞰的に見ることもできます。

付箋に書き出して見える化してもらった後は、1人ずつその内容を発表し共有してもらいます。こうすることで、全員が意見を発言することができるのと同時に、一人ひとりの考えを全員が知ることができます。また、付箋に書き出してから発言してもらうことによって、先に発言した人の意見に流されず、自分自身の意見やアイデアをそのまま発言してもらうことができます。

そして、付箋は何度でも貼り直すことができるので、グルーピングをしてみる、時間軸上に並べ替えてみるなど、自由に様々な形に変化させていくことができます。

実際のチームミーティングで、付箋に自分の考えを書き出した後にチームメンバーに共有してもらったところ、メンバー全員が自分の率直な意見や改善点を伝えることができるようになりました。また、書き出した付箋を時間軸に並べ替えていくことで、どの課題についてはいつ頃までにできる様になる必要があるかを検討し、プランニングも行うことができました。

 

(3)感謝の拍手をする

●チームの課題:練習後のミーティングで発言する選手が少なく、雰囲気も良くない

ミーティング全体の雰囲気が良くないという時もあるかと思います。雰囲気が悪いと発言しにくいですし、せっかく発言してくれている人がいても、その後に続いて発言しにくいですよね。

●改善策:発言者に『感謝の拍手をする』をルールにする

ミーティングスタート時に「誰かが発言してくれた後は、どんな内容でも、発言してくれてありがとうの気持ちで、みなさん拍手をしてください」と伝えます。

どんな発言にも拍手が起こることで、発言した人はうれしい気持ちになりますし、他の人も発言してみようという気持ちになります。

そして、一つ一つの意見やアイデアが、拍手で受け入れられていくことで、安心安全な空気感となり、ミーティングの雰囲気が前向きなものに変わって行きます。

実際に、「発言してくれた後は、どんな内容でも、感謝の拍手をする」というルールをチームミーティングに取り入れてみると、発言量も笑顔も増え、雰囲気がとても良くなりました。発言量が増えたことでチームの課題や改善点を表出させることができ、翌日の練習の質をより高めて行くことができました。

 

【出典】
エイミー・C・エドモンドソン 恐れのない組織 英治出版

ラグビー日本代表のメンタルの礎をつくった名将エディーの“ゴッドマザー”【メンタルコーチ・荒木香織】https://www.businessinsider.jp/post-206935

 

【本記事の執筆者】

橋本幸恵

旭化成ホームズ(株)に勤務。その後、コーチング・コミュニケーション・チームビルディングを学ぶ。現在はスポーツメンタルコーチとして、指導者・チーム・選手の、モチベーションマネジメント・パフォーマンス向上・本番発揮力などをサポート。それらの経験を活かして企業研修も行っている。

個人の底力を引き出す身体感覚や五感も扱うコーチングを得意とする。また、アスリートのセカンドキャリアサポートの経験を活かしたアドバイスにも定評がある。

(一社)フィールド・フロー認定スポーツメンタルコーチ、チームフロープロコーチ養成スクール認定コーチ