ロジックツリーとは
ロジックツリーとは抽象的な物事を、要素に細かく分解して、視覚的に整理するためのツールです。主な用途としては、問題の分析や解決策を構造化するために使われます。
ロジックツリーを作る際には下記の三つのポイントを押さえる必要があります。(この三つのポイントはマーケティングで有名な佐藤義典氏の本を参考にしています。)
① MECEな分類・分解
下位の情報は上位の情報を必ずモレなくダブりなく分類または分解したものになります。(MECEとはMutually Exclusive Collectively Exhaustiveの略です)
② レベル揃え
同じ階層の要素の抽象度が揃っている必要があります。例えば、同じ階層に「野菜、リンゴ、ミカン」とあるのはレベルが揃っていません。「野菜、果物」ならばレベルが揃っています。
③ 構成が明快
上位の情報が下位の情報を包含し、下位の情報が上位の情報の要素を構成します。
例えばラーメン屋さんの客数の減少の要因を分解したロジックツリーが下の通りです。新規顧客数とリピート客に分けて要因を分析しています。
2階層目を例にして説明すると新規客とリピート客はMECE(モレがなく、ダブりもない)ですし、新規とリピート客に言葉のレベルが揃っています。そして最後に新規客とリピート客は全体の客数を構成していますし、全体の客数は下位の新規客とリピート客を包含しています。
このように要素をロジックツリーで整理すると、色々な問題で頭が混乱していたのがスッキリする感覚が得られると思います。
問題解決でのロジックツリーの使い方
この便利なロジックツリーですが、問題解決においてロジックツリーを使う場合には注意が必要です。
例えば、売上が下がっているという問題に対して、いきなり解決策のロジックツリー(Howのロジックツリー)を使うとプロモーションを行う、営業員を増員する、新製品を開発する、など様々な解決策が出てしまい、何に取り組めばよいかわからなくなってしまいます。
実は問題解決のためには、適切な順番で、適切な種類のロジックツリーを使わなければならないのです。その際に参考になるのがお医者さんが患者を診る時のプロセスです。
例えば熱がある場合、お医者さんは必ず問診や診察をして、その原因が風邪なのかインフルエンザなのか、はたまた花粉症なのかを特定します。そしてそれに対して薬を処方します。
ポイントは最後にコミュニケーションがあることです。薬を飲むのは患者さんですので、主に薬剤師さんが薬の飲み方や注意事項を伝えて、きちんと薬が効くためのコミュニケーションを行っています。
このプロセスは実はロジックツリーで表すと非常に簡単に理解できます。
まず課題分析のロジックツリー(Whyのロジックツリー)で原因を分析し、原因がわかればそれを解決するための解決策のロジックツリー(Howのロジックツリー)で解決策を検討します。そして最後に患者さんに理解してもらい、行動してもらうために、コミュニケーションのロジックツリーで説明しています。この流れを業務でも使えるように表現すると以下のようになります。種類の異なるロジックツリーの関係性がわかると思います。
ロジックツリーを使う際のマインド
問題解決に取り組む時にはいつもお医者さんの治療プロセスの例を頭に浮かべるようにしてください。
例えば、私達がよくやりがちなのは、課題分析をせずにいきなり解決策に飛びついてしまうことです。これはお医者さんが診察や検査をせずに、「たぶんインフルエンザだろう」といきなり患者さんにインフルエンザ薬を投与することと一緒です。どれくらい危険なことかわかるかと思います。
また、課題を分析することに時間ばかりかけてしまい、いつまでも解決策が出てこないようなこともあるかと思います。これはお医者さんが診断や検査ばかり数か月費やして、薬を出してくれないことと同じです。これでは病気はどんどん悪化してしまいます。
問題解決の時には自分が医者になった気分で、「まずは診察だな」とか「原因がわかったから次は投薬だな」という風に意識するとプロセスを間違えることは少なくなると思います。
ロジックツリーを使う上での注意点
3つの種類のロジックツリーについて紹介してきましたが、一つ注意してほしいことがあります。それは、課題分析のロジックツリー/解決策のロジックツリーと、コミュニケーションのロジックツリーでは大きく性質が異なるということです。
課題分析のロジックツリーと解決策のロジックツリーは、コトやモノを扱います。ですので、特定の課題をテーマにした場合、ある程度正しい答えというものが存在します。
一方で、コミュニケーションのロジックツリーは、ヒトを扱います。コミュニケーションのロジックツリーの目的は「相手に期待する行動をしてもらうこと」になりますので、相手に動いてもらえることが正解になります。
その場合、伝え手と相手の関係性も伝え方に影響してきますので、コミュニケーションのロジックツリーは誰が伝えるか、誰に伝えるかによって様々なバリエーションの可能性が生まれます。関係性によっては、そもそもロジックを作って伝えるより、飲みに行って話した方が早いということが起こりえます。
課題分析や解決策をロジカルに行えば行うほど、そのプロセスを相手に伝えれば誰でも理解して行動してくれるはずだと思いがちになりますので、この点は注意しましょう。
おわりに
いかがだったでしょうか。世の中にロジカルシンキングやロジックツリーを扱った書籍はたくさんありますが、種類の異なるロジックツリーの関係性を整理したものは少ないように思います。ぜひ問題解決の際に活用していただければと思います。
またRubatoでは今回の内容をより実践的にお伝えする公開講座「課題解決のためのロジカルシンキング」を提供しています。もしご興味がある方がいらしたらぜひご参加ください。
松上 純一郎
同志社大学文学部卒業、神戸大学大学院修了、University of East Anglia修士課程修了。
米国戦略コンサルティングファームのモニターグループで、外資系製薬企業のマーケティング・営業戦略、国内企業の海外進出戦略の策定に従事。その後、NGOに転じ、アライアンス・フォーラム財団にて企業の新興国進出サポート(バングラデシュやアフリカ・ザンビアでのソーラーパネルプロジェクト、栄養食品開発プロジェクト等)や栄養改善プロジェクトに携わる。
現在は株式会社ルバート代表取締役を務める。組織の変革のためにはスキルとwillの両面からサポートすることが必要という考えから、ビジネススキル研修、そしてコーチングのサービスを提供している。