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【当社発表のプレスリリースに関して】東京大学山崎研究室との出会いと共同研究のきっかけ

この度、東京大学山崎研究室とのAIを用いたプレゼンテーションスライドの評価の共同研究を開始することになりました。今回の研究では、スライドのわかりやすさを定量的に表現し、改善余地がある部分を指摘する、というゴールをイメージしています。将来的には改善方法まで指摘するということを視野に入れています。

資料作成講座で資料の作り方を教えている一方で、資料作成の自動化を進めるAIの共同研究をすることは、資料作成研修・講座の提供を生業の一つにしているルバートにとって、自らの事業機会を縮小させて、自社の首を絞めることにならないのか質問を受けることが多かったので、今回の共同研究に至った経緯と背景にある私の考え方をお伝えしたいと思います。

山崎先生との出会いは、2018年10月14日に開催された、研究者や起業家が講演する「SEEDS Conference 2018」という日本版TEDのようなイベントでした。

山﨑先生はAIを用いて「魅力」を数値化するというテーマでプレゼンテーションをされていました。

※山崎先生の研究に関する参考記事(SEEDS Conference 2018の内容ではございません):

プレゼンの出来栄え、AIが客観評価 東大が開発(2018/4/22  日本経済新聞 電子版)

プレゼンスライドのデザインもアドバイス:AIで女性の顔の“魅力”も数値化――東大で研究中の「魅力工学」とは?(ITmedia エンタープライズ)

PRはAIでどこまで進化するのか?(前編)~魅力工学とは~(デジタルPR研究所)

すでに山﨑先生はスライドの評価の研究をされていて、プレゼンテーションの中でそのデモを拝見し、「これはルバートの今まで蓄積した知見を活用できるのでは?」とふと頭をよぎりました。
そこで、早速山崎先生にお話をしたところ、私の著書「ドリルで学ぶ! 人を動かす資料のつくりかた」を既に読んでおられていて、トントン拍子に話が進みました。

そもそもなぜ私がAIに興味を持ったかについてご説明をしたいと思います。

私たちは、思考→表現→作成というプロセスで資料を作成します。「何を作ろうかな?」「内容はこんな感じかな?」と思考し、次に「どう表現しようかな?」と表現を考え、最後にPowerPoint、Googleスライド、Keynoteなどのスライド作成ツールを使ってその表現を実現するという流れです。

その中で本質的な付加価値や違いを生み出すのは「思考」と「表現」の部分だと思います。

例えば、マッキンゼーのコンサルタントは、自身の考えたことをサラサラと紙に書き、それをスキャンしてインドに送ります。すると、数時間後にはインドから紙に書いた内容がPowerPointのファイルと化して戻ってきて、それをまとめるという仕事の仕方をしています。つまり、「作成」の部分はできるだけコストが低いリソースに任せて、コンサルタントは「思考」と「表現」にリソースを集中しているのです。

私も、人はできる限り、個人の思考力、判断力、経験が要求されるクリエイティブな「思考」や「表現」の部分に集中した方がより充実した生産活動を行うことができると考えており、「作成」の部分は定型的な作業で人間のパフォーマンスを上回る可能性があるものなので、できるだけAIを活用するのが良いと考えています。

また、山崎先生の「AIを人間のスキルアップのサポートとする位置づけとしたい」という考えにも共感しています。

つまり、良いアイデアがあってもどのように表現すればよいかわからない時に、AIが「このように表現すればよいのでは?」と提案してくれれば、その人はより早く表現力を高めることができます。

ルバートは「PowerPointの使い方を教える場」と勘違いされる方が多いのですが、実際はそうではなく、「資料を通じて自身のアイデアを伝えることをサポートする場」と定義しています。

私の新著『PowerPoint資料作成 プロフェッショナルの大原則』の半分以上は、PowerPointというより「考え方」や「表現方法」の内容になっています。また、ルバートが提供する資料作成講座についても、ストーリーライン、図解、グラフのどれをとっても、PowerPointの操作というより、「どのように思考し、表現するか」という部分にフォーカスしています。あくまでも、「考え方や表現を訓練し、アイデアの伝達力や実現力を鍛えること」がルバートのコンテンツです。

私としては、将来的には人間は「思考」や「表現」の部分にのみ集中して、創造力や課題解決力を発揮し、「作成」はAIが人間を補助してくれる働き方を実現したいと考えています。

過去に「戦略的プレゼン資料作成講座」を受講し、ご自身が作成したスライドを今回の共同研究で使用することを許諾していただいた皆様へ、

作成していただいたスライドを今回の研究に使用することを許諾していただき誠にありがとうございます。あらためて御礼申し上げます。

皆さんが作成したスライドと講師陣が添削したスライドが、資料作成という誰もが関わる業務において、日本の未来を変える可能性があるということを想像すると、私も胸が高鳴ります。

また研究の成果が見えてきましたら、皆さまに共有したいと思います。

今後とも宜しくお願いいたします。