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生成AI時代に、議事録作成業務はもう不要なのか?

生成AI時代に議事録作成は不要なのかを解説するブログバナー|議事録は記録ではなくビジネススキルのトレーニングであるという考え方

皆さんこんにちは、ルバート代表の松上です。新しい年度を控え、慌ただしい日々を送られている方も多いのではないのでしょうか。私は忙しい日々の中でも最近注目を浴びている生成AIの様々なサービスを使って、業務の効率化やより創造的なことができないかということを日々試行錯誤しています。そこで今回は生成AIを使うと真っ先になくなるだろうと思われる議事録作成の業務について書いてみたいと思います。

本記事の執筆者
松上 純一郎マツガミ ジュンイチロウ
  • 株式会社Rubato代表取締役
  • 『PowerPoint資料作成プロフェッショナルの大原則』
    『ドリルで学ぶ!人を動かす資料のつくりかた』著者

 

議事録は何のために書くのか?

近年、生成AIの進化によって議事録作成は大きく変わりました。私自身も一人で参加する外部との会議では、AIによる議事録を活用し、会議終了直後に生成AIが作成した会議の要約を他のメンバーに共有することがよくあります。決定事項やアクションが整理されており、非常に便利で私自身大変助かっています。

そのような流れの中で、弊社が提供する議事録研修について、こんな声も増えてきています。

 「議事録はAIが書いてくれるから、もう学ばなくてよいのでは?」
 「議事録研修は優先度が低い気がする」
 「自分にとって必要性を感じない」

確かに、「完成された議事録」というアウトプットだけの観点で見ると、生成AIで十分なのかもしれません。しかし、ここで一度立ち止まって考えたいのは、「議事録は何のために書くのか?」ということです。

議事録の本質は「記録」ではなく「トレーニング」

議事録というと、一般的には「言った言わないを防ぐための記録」、「過去の議論を思い出すための記録」のような役割が強調されます。私自身、コンサルティング会社にいた頃は、「議事録は重要な成果物の一つ」として教えられました。

その議事録を取ることはコンサルティング会社の新人にとって大事な業務であり、書いた議事録には先輩コンサルタントから何度も何度も赤ペンで修正が入り、フィードバックが入れられました。印象的だったのは、「勝手に情報を取捨選択するな」という指摘です。新人のうちは何が重要か判断できないため、できるだけ多くの情報を取り、その上で整理するということをやっていました。

この議事録作成という業務ができるようになることはコンサルタントとして一つの関門と言ってもよいと思います。議事録をとれないうちはまだまだ半人前未満という考えがコンサルティング会社にはありました。コンサルティング会社では議事録を書けるということはビジネススキルがある一定水準まで達しているという一つの目安になっていたのです。

そのため議事録の作成は若手の育成のためのトレーニングという側面がコンサルティング会社では非常に大きかったと感じています。

なぜ議事録が人を育てるのか?

では、なぜ議事録がビジネススキルのトレーニングになるのでしょうか。それは、議事録を書くプロセスの中に、ビジネススキルのエッセンスが凝縮されているからです。例えば、議事録を書くためには以下のような力が求められます。

① 情報整理・構造化力

会話をそのまま書くのではなく、「何が重要か」を判断し、構造化する力です。これはそのままロジカルシンキングの力に直結します。

② 要約力

長い発言を「つまり何か」に落とし込む力です。情報理解力・要点把握力のベースになります。

③ 論点把握力

会議で何が論点になっていて、今どの論点について議論しているのかを理解する力です。この力があると、会議の脱線にも気づけるようになります。

④ 合意形成理解力

何が決まり、何が決まっていないのかを整理する力です。アクションを明確にする力にもつながります。

⑤ 情報の解釈力・感度

会議参加者の発言について「これは事実か、解釈か」「主観か客観か」を見極める力です。

単なる逐語録ではなく、編集されてわかりやすい議事録を作るためには上記の力が必要となりますし、逆に議事録を取り、編集するということを重ねると上記の力が蓄積されていくのです。

さらに、これらの力を伸ばすためには、「解釈は正しいか」、「抜け漏れはないか」、「構造は適切か」などのポイントを第三者(上司・先輩)がフィードバックすることが大切です。解釈や構造化が適切かどうかや抜け漏れは自身で気づくことが難しいため、他者からのフィードバックがあって、初めて理解し、改善していくことができます。一方で、上司が実際に内容を修正する必要があるためこのプロセスには多大な労力が発生します。上司に余裕がないとフィードバック自体ができなくなってしまうのが、このトレーニングの難しいところなのです。

AI時代だからこそ、議事録作成の価値は変わる

では、生成AIがある今、議事録作成にはどう向き合うべきでしょうか。結論としては、若手人材にビジネススキルトレーニングの意味合いで議事録を作らせ、生成AIを活用してセルフチェックしていってもらうということだと思います。例えば会議などに若手を同席させる場合に、AI議事録を使いつつ、若手には議事録を取ってもらい、議事録を完成させるところまでをやってもらいます。

そして生成AIの議事録を使って、若手に自身で抜け漏れなどを修正してもらいます。そのうえで最終的に上司や先輩社員が内容のチェックを行い、重要な発言などをフィードバックしていくというやり方です。この方法であれば、上司は内容のフィードバックの時間を節約できますし、若手も自身の認識などの誤りに気付くことができます。

ビジネスの推進が目的の議事録作成」から、「ビジネススキルの向上が目的の議事録作成」へ、これが生成AI時代の新しい議事録のあり方だと思います。

まとめ:議事録作成は「ビジネススキルの土台」

いかがだったでしょうか。議事録は単なる記録ではなく、ビジネススキルを総合的に鍛えるトレーニングだということがご理解いただけたでしょうか。「ロジカルシンキング」、「ファシリテーション」、「コミュニケーション」、これらすべてを鍛えられるのが議事録作成です。生成AIの時代だからこそ、「議事録を書く意味」をアウトプットではなくプロセスに置き換えることが重要だと私は考えます。

ぜひ、日々の会議の中で、「これは思考のトレーニングである」という視点で議事録作成に向き合ってみていただくとよいのではないでしょうか。

ルバートでは、議事録の取り方から整理・編集の方法まで体系的に学べる研修をご用意しています。ご興味のある方は、ぜひ体験セミナー公開講座をご覧いただければと思います。

 

【本記事の執筆者】
松上 純一郎

同志社大学文学部卒業、神戸大学大学院修了、University of East Anglia修士課程修了。
米国戦略コンサルティングファームのモニターグループで、外資系製薬企業のマーケティング・営業戦略、国内企業の海外進出戦略の策定に従事。その後、NGOに転じ、アライアンス・フォーラム財団にて企業の新興国進出サポート(バングラデシュやアフリカ・ザンビアでのソーラーパネルプロジェクト、栄養食品開発プロジェクト等)や栄養改善プロジェクトに携わる。
現在は株式会社ルバート代表取締役を務める。組織の変革のためにはスキルとwillの両面からサポートすることが必要という考えから、ビジネススキル研修、そしてコーチングのサービスを提供している。