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組織の「停滞感」をどう打破するか:部門責任者のエンゲージメントを高め、自走する組織へ導くコーチング事例

部門責任者のエンゲージメント低下をテーマに、自走する組織へ導くコーチング事例を紹介するブログ記事のバナー画像

≪目次≫
1.はじめに:
 増大する業務負担と、リーダーが直面する「意欲の減退」
2.ケース紹介:
 組織の停滞と「未来への不安」に直面した責任者の葛藤
3.コーチングによる内省:
 感情を言語化し、自身の「信念」を再定義する
4.具体的な変化:
 指示待ち組織から「自律し、相談し合える組織」への一歩
5.おわりに:
 リーダーの「意味づけ」の刷新が、組織の未来を創る

本記事の執筆者
近江 佳代子オウミ カヨコ
  • THE COACH ICP インテグレーションコース(プロコース)修了
 

1.はじめに:増大する業務負担と、リーダーが直面する「意欲の減退」

組織の中核を担う部門長や拠点長クラスのエンゲージメント低下は、今や多くの企業が抱える深刻な課題となっています。

パーソル総合研究所の調査によれば、多くの管理職が「昨年からの変化として業務量が増加した」と感じています。こうした物理的な業務負担に加え、トラブル解決やハラスメント対処などの心理的負担も含め、負担感が高い管理職ほど、仕事に対する意欲が減退しているという実態が明らかになっています。

日々のトラブル対応や業務に追われ、本来注力すべきマネジメントや組織の未来を描く余裕を失ってしまい、その結果、自らの役割に対する「意味」を見失ってしまうケースは少なくありません。今回は、ある部門責任者がコーチングを通じて、組織への「諦め」を「変革への覚悟」へと変えていった事例をご紹介します。

※パーソル総合研究所「中間管理職の就業負担に関する定量調査」より

2. ケース紹介:組織の停滞と「未来への不安」に直面した責任者の葛藤

今回ご紹介するのは、ある企業の製造部門の責任者(Aさん)の事例です。

Aさんは、前任者からの引き継ぎ不足や設備の老朽化、さらには「自ら考えて動かない」現場の体質に、強い憤りと無力感を感じておられました。当時の心境を、Aさんは「ドロドロの沼のよう」「胸のあたりに、ずっと重くて気持ちの悪いモヤモヤがある」と表現されていました。

「いつまで、どこまで、自分はこの役割を続けるのか」 「自分がいなくなった後(数年後の異動を見据えて)、この組織はどうなってしまうのか」

日々のトラブル対応に追われる中で、本来リーダーとして描くべき「未来のビジョン」よりも、「負の遺産」を整理することにエネルギーを奪われ、Aさん自身のエンゲージメントが低下している状態でした。

3. コーチングで「内的モチベーション」と「未来像」を再発見

コーチングのセッションでは、まずこの「モヤモヤ」を徹底的に言語化することから始め、その感情を無理に払拭しようとはせず、その正体を見つめるよう問いかけました。

コーチ:「その『ドロドロした沼』の底には、何が沈んでいますか?」

Aさん:「前任から引き継いだ負の遺産や、何度言っても動かない現場への諦めかもしれません。もう、この役割をどこまで続ければいいのかと」

コーチ:「”諦め”と言うAさんからは、期待というか、願いのようなものも感じます」

Aさん:「動かないというか、誰もが自然と動けるようにしたいんですよね。誰もが迷わずに誇りを持って動ける環境。本当は、そんな組織にしたい」

コーチ:「それはAさんが、何よりも大切にしてきた『こだわり』なのですね」

Aさん:「そうです。私は、現場が主体的に動くことで、結果、スムーズに回る組織が理想だと思っていて、今のメンバーなら本当はできると感じています。うーん、自分は今の組織の状態が、ただ『残念』で仕方がなかったんですね」

この対話から、組織への憤りは、実は「この組織を、もっと良くできるはずだ」という強い期待と願いの裏返しだったということに気づかれたのでした。今の苦しみは、自分が組織を大切に想っている証拠でもあったのです。

そして、「後任に”綺麗なバトン”を渡す。そのために、自分がいる間に『自走する組織』の土台を作る。それが今の自分の役割だ」と定義されました。

沼だと思っていた感情の正体が「譲れない信念」だと気づいたAさんの視界は少し開け、次世代へ向けた「覚悟」のようなものが感じられるようになりました。

4. 具体的な変化:指示待ち組織から「自律し、相談し合える組織」への一歩

意味づけが変わると、アクションプランに変化と実効性が加わりました。Aさんは、これまで一人で抱え込んでいた課題を、マネジメント層にオープンにし、議論の場を設けることにしました。

【具体的なアクションプラン】
●「自走する組織」の指針作成: リーダー層と共に「自分たちはどうありたいか」を明文化する。
●対話の質の変化(具体的な施策): これまでの「指示」ではなく、「どう思う?」と問いかけ、部下の思考を促す関わりを意識する。
●習慣の変化を追う(独自のKPI) :「責任者が全部決めてくれる」と思っていたメンバーが、自律的に考えて「こうしたい」と相談に来る回数を、組織の自立性の指標とする。

「いずれ自分が去った後も回る組織にする」という具体的な目標が、現場の主体性醸成と、信頼を増すための具体的な行動へと繋がっていきました。

5. おわりに:リーダーの「意味づけ」の刷新が、組織の未来を創る

リーダーのエンゲージメントは、個人のモチベーションの問題だけではありません。リーダーが自分の仕事にどのような「意味」を見出し、それをどう語るかは、そのまま組織の文化になります。

リーダーが、多忙な日常の手を止め「立ち止まって振り返る」時間を持つこと。そして、自身が大切にしたい価値観と組織の目指す姿との間に、納得感のある接点を見出すこと。 コーチングは、リーダーが孤独な沼から抜け出し、未来に向けて今自分が何をすべきか、そのためのリーダーシップとは何かを再定義するための強力なパートナーにもなりえます。

貴社の「組織のハブ」であるリーダーたちは、今、どのような意味を持って組織を率いていますか?

 

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【本記事の執筆者】
近江 佳代子

就職超氷河期に大学を卒業。4度の転職を経て、
異なる業界・職種での経験を重ねながら、自らの「働く意味」を問い続ける。

中西金属工業株式会社で約20年間勤務し、営業企画や経営企画にて管理職を務める。
複数の事業部で課題解決会議を主導し、課題設定からKPI策定、
現場が主体的に動くアクションプラン立案と実行を支援した。

現在はコーチ、研修講師として人と組織の成長に伴走する傍ら、
学校づくりを手がける認定NPO法人コクレオの森の理事としても活動。

クライアントが”ほんとうの想い”に気づき、自分と深くつながることで、
自分らしく行動を起こしていくプロセスに寄り添うコーチングが特徴。

・THE COACH ICP インテグレーションコース(プロコース)修了