実はRubatoでは、月1回・1時間、業務での細かなビジネススキルを共有する社内勉強会を行っています。テーマは、ロジカルシンキングのような概念的な話だけでなく、Excel、PowerPoint、メール、議事録、データの扱い方、といった、日常業務の質を左右する細かいスキルまで及びます。今回は、その勉強会で取り上げたテーマの中から「Excelでやってはいけないこと」を選んで、皆さんにも共有したいと思います。
Excelで「やってはいけないこと」
普段の業務でExcelに数字を入力する、定型フォーマットを埋める、といった使い方をする人は多いと思います。一方で、自分でエクセルシートを作る、集計用の表を設計する、シミュレーションモデルを作る、といった一歩進んだ使い方ができるようになると、仕事の幅が広がり、周囲からの信頼も一段上がります。
そのときに重要になるのが、ピボットテーブルや関数なのですが、その前に必ず押さえておきたいのが、そもそも「エクセルでやってはいけないこと」を知るということです。今回は、私がコンサルタントとして多くの会社の業務を見てきた中で「これは本当によく見かける」「後から必ず困る」と感じた Excelでやってはいけないこと20個 をご紹介します。
Excelでやってはいけないこと(1〜10)
まずは前半の10個をご紹介します。
1. セルをマージする → ソートやフィルターが使えなくなります
2. 数式の中に直接数字を入れる → 後から数式の数値を変更する際に手間が増え、誤入力の原因になります
3. 書式がバラバラ → 異なるフォントやセルの色を使用すると、見栄えが悪くなり、読みづらくなります
4. 列や行を非表示にする → 他の人が見落としやすくなります
5. 長すぎる数式を1セルに詰め込む → 間違う可能性が高くなります
6. 表に不要な空白行・空白列を残す → 集計に悪影響が出ます
7. マクロを多用する → 他の人がファイルを読み解けず変更しにくくなります
8. 条件付き書式を使いすぎる → パソコンの動作が重くなります
9. ウィンドウ枠の固定をしない → スクロールすると見出しが消えます
10. シート名が長すぎる → 画面に表示されるシートタブが減ってしまいます
いかがでしょうか。私が一番よく見かけるのは、「1. セルをマージする」です。見た目を整えたい気持ちは分かるのですが、数字をデータとして扱うエクセルでは避けたい操作です。どうしてもセルをまたいで表示したい場合は、「選択範囲内で中央」などの方法を使いましょう。
また、「2. 数式の中に直接数字を入れる」も非常に多いです。たとえば「=4+5+6」のような書き方は、その場の計算では問題ありませんが、他の人も使うシートではやめた方が良いです。別セルに4、5、6をそれぞれ入れ、それを参照する形にしましょう。
エクセルのスキルがある程度高い人によくあるのが「4. 列や行を非表示にする」です。シートを見やすくするために行っているのだと思いますが、どこにデータが隠れているか、自分自身やほかの人が分かりにくくなるのでやめた方が良いです。隠したい場合は「アウトライン」から「グループ化」のコマンドを使いましょう。また、「7. マクロを多用する」も避けましょう。ほかの人がマクロを必ずしも読み解ける人ではない可能性もあるからです。コンサルタント時代はエクセルでのマクロの使用は禁止されていました。
Excelでやってはいけないこと(11〜20)
次に後半の10個をご紹介します。
11. 日付をテキストで入力する → 集計しにくくなります
12. 数値に単位(円・人など)を一緒に入れる → 集計しにくくなります
13. 色で意味を表す、打消し線を使う → 集計しにくくなります
14. 1つのシートに複数の表を入れる → 例外もありますが、基本は1つのシートには1つの表が原則です
15. 印刷プレビューでページ調整せずに印刷する → ページの切れ目がわかりにくくなります
16. セルの中で文字列を折り返さない → 文字が読みにくくなります
17. 列幅を調整していない → 文字が読みにくくなります
18. 曜日を手入力する → 入力間違いの元です
19. セルに無駄なスペースを入れる → 集計が難しくなります
20. 表頭・表側に色を付けない → 表が読みにくくなります
いかがでしょうか。特によく見るのは、「13. 色で意味を表す」です。例えば、赤文字=要注意、青文字=対応済み、といった使い方です。これは人間の目には分かりやすいのですが、集計・分析という観点ではよくありません。代わりに、ステータス列を作ることや対応済みのフラグ列を追加する、といった形にするだけで、後からの集計が圧倒的に楽になります。
また、「15. 印刷プレビューでページ調整せずに印刷する」も地味ですが重要です。ページ区切りがズレていると、「想定と違う資料」が出来上がってしまいます。必ず印刷プレビューでページの切れ目の位置調整をしてから印刷するようにしましょう。「16. セルの中で文字列を折り返さない」も要注意です。文字列を折り返せば、自分自身、またシートを受け取る人が文字を読みやすくなります。
Excelの本質は「後から使えるデータかどうか」
ここまで20個、「やってはいけないこと」として紹介してきましたが、これらに共通している考え方はとてもシンプルです。他の人が使うことを想定しているか、未来の自分が見ても分かるか、集計が可能かという視点です。
最近はDXという言葉が広まり、Pythonや高度な分析に目が向きがちですが、その前段階として、「集計しやすい」、「分析に耐えられる」、「機械が読める」ようなExcelデータを作れているかどうかが将来のデータ活用を左右する非常に重要なポイントです。高度なツールを学ぶ前に、まずはこうしたエクセルの基本を丁寧に積み重ねること、それこそが、現場レベルでの本当のDXだと私は思っています。
まとめ:「やった方がいいことリスト20」
最後に、今回の20個を裏返すとやった方がよいことリストになります。
1. セルはマージせず、1セル=1データを守る(複数セルにまたがる場合は、「選択範囲内で中央」などの機能を使う)
2. 数式に使う数字は、必ず別セルに置き、参照する
3. フォント・色・配置はルールを決めて統一する
4. 列や行は「非表示」を使わず、グループ化の機能を使う
5. 1つのセルに長い数式は使わず、複数のセルに数式を分ける
6. 表に不要な空白行・空白列は作らない
7. マクロに頼らず、基本的には関数で解決する
8. 条件付き書式は目的を限定して使う
9. ヘッダー行・列は必ずウィンドウ枠で固定する
10. シート名は短く、意味が分かる名前にする
11. 日付を入力するセルは、必ずセルの表示形式で「日付」を設定する
12. 数値と単位はセルを分けて入力する
13. 数字の意味は色ではなく、列やフラグで表現する
14. 1シート1表を原則にする
15. 印刷前には必ず印刷プレビューでページの切れ目を調整する
16. 長い文字列はセルの中で折り返して可読性を上げる
17. 列幅・行高を整え、セルの中を読みやすくする
18. 曜日は日付から自動計算する(TEXT関数を使う)
19. セル内に不要なスペースを入れない
20. 表頭・表側には色を付け、構造を一目で分かるようにする
>いかがでしょうか。ぜひ、明日から使うエクセルで一つでも意識してみてください。きっと、仕事の進み方や周囲からの評価が少しずつ変わってくるはずです。
松上 純一郎
同志社大学文学部卒業、神戸大学大学院修了、University of East Anglia修士課程修了。
米国戦略コンサルティングファームのモニターグループで、外資系製薬企業のマーケティング・営業戦略、国内企業の海外進出戦略の策定に従事。その後、NGOに転じ、アライアンス・フォーラム財団にて企業の新興国進出サポート(バングラデシュやアフリカ・ザンビアでのソーラーパネルプロジェクト、栄養食品開発プロジェクト等)や栄養改善プロジェクトに携わる。
現在は株式会社ルバート代表取締役を務める。組織の変革のためにはスキルとwillの両面からサポートすることが必要という考えから、ビジネススキル研修、そしてコーチングのサービスを提供している。