ただ、その後研修などで多くの方とお話ししていると、「質問が大事なのは分かるけれど、何を聞けばいいのか分からない」、「質問しようと思ってもタイミングがつかめない」、という声をよくいただきました。たしかに、「中の質問」「外の質問」という整理は分かりやすい一方で、質問に苦手意識がある方にとっては少しハードルが高く感じるかもしれません。
そこで今回は改めて、会議で質問をするための基本の考え方を整理してみたいと思います。
1.会議で質問が苦手な人ほど「必ず質問する」と決めておくことが大切な理由
まず最初にお伝えしたいのは、以前のブログでも書いた通り、「会議では必ず何か一つは質問する」と決めておくことです。海外のビジネスや大学などの場に行くと、驚くほど質問が飛び交います。もちろん、全員が鋭い質問をしているわけではありません。とんちんかんな質問もあったりします。そんな質問が出るのは、「この場では質問するのが当たり前」、「参加しているなら何かしら発言する」、そんな文化が自然にあるからのように感じます。
日本では、相手に遠慮したり、「的外れだったらどうしよう」と考えたりして、質問を控えることも多いと思います。それ自体が悪いわけではありませんし、日本人には日本人なりの会議の文化があると私は思います。ただ、やはり会議では質問があるほうが内容は深まりますし、参加している側も「自分が会議に貢献できた」という実感を持ちやすくなります。
だからこそ、良い質問をしよう、意味のある質問をしよう、と完璧を目指すよりも、「まずは質問する前提で参加する」ことがまずマインドとしてとても大切だと思います。そして、質問する前提のマインドがあるからこそ、質問が浮かびやすいということは必ずあるように思っています。
2.良い質問とは?会議を前に進める「質問力」の基本の考え方
とはいえ、質問するならできれば「良い質問をしたい」というのは誰でも思うところだと思います。では、どのような質問が「良い質問」なのでしょうか。私は、「タイミングに合っていて、仕事を前に進める質問」が良い質問だと思っています。つまり、ポイントは、会議の流れに沿っているかどうか、なのです。
では、会議にはどんな流れがあるのでしょうか。私は、良い会議には次の5つの流れがあると感じています。
①理解をそろえる
②議論を深める
③優先順位を決める
④視点を広げる
⑤行動につなげる
この順番が会議において意外と大事なのです。
つい私たちは、前提がそろっていないのに議論を始めてしまいがちです。すると、「そもそも話している対象が違った」、「目的の認識がズレていた」、ということが起こります。だからこそ、まず理解をそろえ、そのうえで深め、優先順位を決め、広げ、最後に実行へつなげる。この流れに沿って質問すると、会議はかなり進めやすくなります。
3.会議の質問は5つに分けられる|仕事を前に進める質問の基本パターン
①理解をそろえる質問|会議の認識や目的を合わせる質問例
まず最初は、前提や認識を合わせる質問です。例えばこんな質問です。
今回の議論の対象はどこまででしょうか?
今回の目的は何でしょうか?
なぜこのテーマを扱うのでしょうか?
前回はここまで話した認識ですが合っていますか?
一見シンプルですが、皆の認識を揃える上でとても重要な質問です。これらの質問は「自分のための確認」のようでいて、実は参加者全員の理解をそろえることにつながります。
②議論を深める質問|会議の中身を深掘りする質問例
次は、話の中身を深掘りする質問です。例えば、以下のような質問です。
なぜそのように考えたのですか?
根拠があれば教えてください
具体的にはどんなケースを想定していますか?
例えばどういうイメージでしょうか?
抽象的な議論を具体にしたり、理由を確認したりすることで、会議の質がぐっと上がります。
③優先順位を決める質問|何を優先するかを明確にする質問例
会議で意外と抜けやすいのがここです。議論はたくさん出たけれど、「結局どれが一番大事なのか」が曖昧なまま終わることがあります。そんなときは、以下の質問が有効です。
今の議論で一番重要なのは何でしょうか?
優先して着手するのはどれですか?
A案とB案の違いは何でしょうか?
優先度が低いものは何ですか?
あえてやらないものを決めるとしたら何ですか?
「大事なもの」だけでなく、やらないものを確認する質問や優先度が低いものを確認する質問は非常に有効です。
④視点を広げる質問|会議で抜け漏れを防ぐ質問例
議論がまとまってきたときに、あえて視点を広げる質問です。例えば、こんな質問です。
顧客の視点から見るとどうでしょうか?
現場から見るとどうでしょうか?
他のやり方はありますか?
そもそもこの前提で良いでしょうか?
目的に立ち返るとどうでしょうか?
議論は深まるほど視野が狭くなりやすいものです。そこで少し外から問いかけることで、よりよい判断につながります。
⑤行動につなげる質問|会議を実行につなげる質問例
最後は「実行できる状態」にする質問です。例えば、以下のような質問です。
誰が担当しますか?
期限はいつですか?
進める上での懸念はありますか?
必要な支援はありますか?
ここまで確認できると、会議が「話して終わり」になりません。
4.会議で質問が思いつかない人へ|質問を準備するコツと使いやすい質問の型
ここまで会議の流れに沿った質問を見てきましたが、実際の研修などでよく聞くのが、「質問したい気持ちはあるのですが、その場で思いつかないんです」という声です。これはとても自然なことだと思います。会議は、相手の話を聞きながら内容を理解して、自分の考えも整理しながら進みます。その場で瞬時に質問を考えるのは、意外と負荷が高いものです。
だからこそおすすめしたいのが、あらかじめ質問のパターンを手元に持っておくことです。たとえば今回ご紹介したような「理解をそろえる質問」「議論を深める質問」「優先順位を決める質問」「視点を広げる質問」「行動につなげる質問」を一覧で持っておいて、「今の話なら、どれか当てはまるかな」と確認するだけでも、質問はかなりしやすくなります。「ゼロからその場で考える」のではなく、「候補の中から選ぶ」だけで気持ちはずいぶん楽になります。
もう一つ、質問をするときにおすすめしたいのが、質問だけで終わらず、自分の考えも少し添えることです。たとえば、「今回の対象はどこまででしょうか?」だけではなく、
「今回の対象はどこまででしょうか?私はAの範囲までを対象として考えていたのですが。」という伝え方です。
こうすると、質問された側は「何を知りたいのか」「相手がどこまで理解しているのか」が分かるので、答えやすくなります。質問だけを投げかけられると、自分の説明に不備があったように感じるのですが、考えが追加されていると、「自分なりに考えたうえで建設的に確認してくれている」と伝わるので、安心して会話がしやすくなることも多いです。
質問は「答えを知らないから聞く」だけではありません。自分の考えを出しながら、一緒に理解を深めていくための対話でもあります。もし質問が苦手だと感じている方は、ぜひ
「質問の型を手元に置く」、「自分の考えを一言添える」、この2つから始めてみてください。会議の中で発言するハードルが、ぐっと下がるはずです。
5.まとめ|会議の質問力は“周りを応援する力”でもある
いかがだったでしょうか。最後にお伝えしたいのは、質問は必ずしも鋭くなくていい
ということです。少し的外れでもいい。確認の質問でもいい。「これはこういう理解で合っていますか?」だけでも十分です。
発言した側からすると、「ちゃんと聞いてもらえている」と感じられますし、会議を進める側にとっても本当に助かります。質問は、自分を目立たせるためのものではありません。話している相手をサポートするもの、ファシリテーターを助けるもの、会議を前に進めるためのもの、なのです。そう考えると、少し質問しやすくなるかもしれません。
日本では、質問に少しハードルを感じやすい場面もあります。でもぜひ、「自分が話す」ではなく「周りを応援する」くらいの気持ちで、一つ質問してみてください。その一つの質問が、会議の流れを大きく変えることもあります。会議に参加するときの参考になれば嬉しいです。
松上 純一郎
同志社大学文学部卒業、神戸大学大学院修了、University of East Anglia修士課程修了。
米国戦略コンサルティングファームのモニターグループで、外資系製薬企業のマーケティング・営業戦略、国内企業の海外進出戦略の策定に従事。その後、NGOに転じ、アライアンス・フォーラム財団にて企業の新興国進出サポート(バングラデシュやアフリカ・ザンビアでのソーラーパネルプロジェクト、栄養食品開発プロジェクト等)や栄養改善プロジェクトに携わる。
現在は株式会社ルバート代表取締役を務める。組織の変革のためにはスキルとwillの両面からサポートすることが必要という考えから、ビジネススキル研修、そしてコーチングのサービスを提供している。

