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生成AIに資料作成を任せても「使えない資料」になる本当の理由

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皆さんこんにちは、ルバート代表の松上です。最近、生成AIの進化によって、資料作成のあり方が大きく変わりつつあります。Claude や Gemini、Genspark といったツールは、パワーポイント資料の作成においても非常に高いレベルのアウトプットを出せるようになってきました。

本記事の執筆者
松上 純一郎マツガミ ジュンイチロウ
  • 株式会社Rubato代表取締役
  • 『PowerPoint資料作成プロフェッショナルの大原則』
    『ドリルで学ぶ!人を動かす資料のつくりかた』著者

実際に、「会議が終わった瞬間に資料ができている」「たたき台はほぼ自動で完成する」といった世界が現実になりつつあります。今後もこの流れは加速し、資料作成の効率はさらに上がっていくと思います

一方で、「生成AIに任せてもうまくいかない」「それっぽいが使えない資料になっている」といった悩みも非常に多く聞きます。今回は、生成AIを活用した資料作成がうまくいくために、人間が担うべき役割とスキルについて、少し踏み込んで整理してみたいと思います。

 

資料作成は“分解”して考える

まず前提として押さえておきたいのは、「資料作成」という行為は、実は一つの作業ではないということです。多くの人は「パワーポイントを作ること=資料作成」と捉えがちですが、本質はそこではありません。資料作成は思考プロセスそのものです。

資料作成は大きく6つのステップに分解できます。

①背景の整理と目的の設定
②構成(ストーリーライン)の設計
③情報収集
④情報整理・表現設計
⑤スライド作成
⑥全体チェック・整合性確認

このように分解してみると、「どこに時間がかかっているのか」「どこに思考が必要なのか」が見えてきます。そして、この中で生成AIが得意なのは主に②~⑤の「作る工程」の領域です。

①背景の整理と目的の設定
②構成(ストーリーライン)の設計(←生成AIが得意)
③情報収集(←生成AIが得意)
④情報整理・表現設計(←生成AIが得意)
⑤スライド作成(←生成AIが得意)

⑥全体チェック・整合性確認

つまり、「作る工程」のかなりの部分はAIに任せられるようになってきています。

生成AIにできないことは何か

では逆に、生成AIが苦手な領域はどこでしょうか。それはインプットとアウトプットのチェックの部分です。先ほどのステップでいうと、最初と最後の部分、つまり「①背景の整理と目的の設定」と「⑥全体チェック・整合性確認」です。

特にインプットの部分は生成AIが担うことが不可能な部分です。インプットの部分については具体的には3つのポイントがあります。

1. 目的の設定

「何のための資料なのか」、「誰に、何のメッセージを伝え、どう動いてもらうのか」この「目的」が曖昧なままでは、どれだけきれいなアウトプットでも意味を持ちません。また、この目的設定は極めて個人のスキルに依存します。相手によってどこまで踏み込むかは当然異なりますし、それを見極めるにはビジネスの経験やセンスが問われます。

2.コンテキスト情報の整理

さらに重要なのがコンテキストです。伝える相手の「役職や立場」、「関心や価値観」、「前提知識のレベル」、「意思決定スタイル」、「組織の状況や力学」、「利用シーン(会議・事前共有・報告など)」、こうした情報を踏まえて、「どう伝えるか」を設計する必要があります。このコンテキスト情報をいかに精度高く入れられるかは、普段からどれだけ相手に興味・関心を持ち、アンテナを立てられているかにかかってきます。これもビジネスの経験やセンスが問われてくる部分です。

3.想定アウトプット

目的とコンテキストを踏まえて、想定するアウトプットも設定する必要があります。「分量・粒度」(5枚で概要、20枚で詳細など)、「結論ファースト、結論ラスト」、「フォーマルな表現、カジュアルな表現」、「図解多め、図解少なめ」、「グラフ多め、グラフ少なめ」、「プレゼンテーション用、説明資料用」など具体的なアウトプットイメージを伝えることで生成AIはより適切なプレゼンテーション資料を作成することができます。

この3つのポイントが曖昧なままだと、生成AIは「一般的には正しいが、今回の文脈では使えない資料」を出してきます。逆に言えば、ここを具体的に設定できれば、生成AIは非常に強力なパートナーになります。

最後は「人間の目利き」がすべて

生成AIを活用する上で、もう一つ重要なのが「アウトプットのチェック」の部分です。ここで求められるのは、ファクトチェックとブラッシュアップの2つです。ファクトチェックはいわゆる、生成AIのハルシネーションによる間違った情報が含まれていないかというチェックになります。もちろんこのファクトチェックも重要なのですが、実は大事なのはブラッシュアップです。

「本当に目的に合っているか」、「相手に刺さる構成になっているか」、「論点がズレていないか」、「もっと良い表現はないか」といった質を上げるためのチェックが大変重要になってきます。例えば、「結論ファーストであるべき相手に対して、結論が後ろにある」、「重要なメッセージが埋もれている」、「図解が複雑で理解しづらい」といった状態のままでは、人は動きません。生成AIはあくまで「それらしく整ったもの」を出すことはできますが、「本当に伝わるか」までは担保してくれません。

ここで非常に重要なのが、人間側が良い資料をどれだけ知っているかという点です。「良い構成とは何か」、「良い表現とは何か」、「分かりやすい図解とは何か」、これらを知っていれば、「こう直して」とAIに指示できます。しかし、知らなければ、AIが出したものをそのまま使うしかありません。つまり、人間の目利き力によって生成AIの力を最大限に引き出せるかが変わってくるということになります。


いきなり全部作らせない

ただ、目利き力と言ってしまうと今までのビジネスの経験やセンス次第になってしまうので、生成AIでの資料作成をうまく行うためにすぐにできることはないのでしょうか。

それは「生成AIに資料をいきなり全部作らせない」ということです。

いきなり資料全部を生成AIに作らせてブラッシュアップを行うと、構成面、表現面、メッセージ面など様々な部分を一度に見る必要がでてきます。それはかなりの負荷ですし、生成AIに対してたくさんの修正指示を行う必要があります。そこで、資料作成のステップごとにチェックするのが有効なのです。

構成だけ出させる → チェックと修正
情報収集させる → チェックと修正
表現とスライド化 → チェックと修正

このように「ステップごとに人間が確認し、ブラッシュアップする」ことで、精度とスピードの両方が向上します。

生成AI時代に求められるのは「基礎スキル」

最後にお伝えしたいのは、少し逆説的な話です。生成AIが進化すればするほど、人間側のビジネススキルがより重要になる ということです。資料作成、ロジカルシンキング、プレゼンテーション、ヒアリング、ファシリテーション、人間側にこれらの基礎スキルがないと、そもそも何を依頼すればいいか分からないし、出てきたものの良し悪しが判断できないし、改善指示が出せない、という状態に陥ります。

つまり、生成AIは、スキルを代替するのではなく、ビジネススキルの高い人はどんどん使いこなし生産性を上げる一方で、ビジネススキルの低い人は生成AI使いこなせず生産性はあまり上がらないという、スキルの差を拡大していく種類のツールなのです。この時代に必要なことは人間がビジネススキルの基礎をしっかりと押さえていくことになってきます。ルバートではその観点からビジネススキル研修で個人のビジネススキルアップ、そして生成AI活用力アップのサポートをしています。

まとめ

生成AIは、資料作成の強力なパートナーになりました。そして今後、その重要性はますます高まっていくでしょう。しかし、成果を左右するのはあくまで人間です。目的を定義する力、相手を理解する力、構造を設計する力、質を見極める力、これらを土台として持った上で生成AIを使うことで、初めて「人を動かす資料」が作れるようになります。ぜひ、生成AIに任せる部分と、自分が担うべき部分を切り分けながら、資料作成の質とスピードを両立させていただければと思います。

 

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【本記事の執筆者】
松上 純一郎

同志社大学文学部卒業、神戸大学大学院修了、University of East Anglia修士課程修了。
米国戦略コンサルティングファームのモニターグループで、外資系製薬企業のマーケティング・営業戦略、国内企業の海外進出戦略の策定に従事。その後、NGOに転じ、アライアンス・フォーラム財団にて企業の新興国進出サポート(バングラデシュやアフリカ・ザンビアでのソーラーパネルプロジェクト、栄養食品開発プロジェクト等)や栄養改善プロジェクトに携わる。
現在は株式会社ルバート代表取締役を務める。組織の変革のためにはスキルとwillの両面からサポートすることが必要という考えから、ビジネススキル研修、そしてコーチングのサービスを提供している。