1.はじめに
「チームコーチング」と聞くと、上司とメンバーが同席し、コーチが場をリードする“同席型”の対話をイメージする方が多いかもしれません。
このスタイルは関係性の質を高めるうえで効果的ですが、働き方の多様化やリモート化が進む中、同じ場を共有すること自体が難しくなっています。
そうした環境下で注目されているのが、“個別型チームコーチング”です。
これは、メンバー一人ひとりが個別に内省を深め、その気づきや行動変化が静かにチーム全体へと波及していくアプローチです。
今回は、私が実際にコーチとして担当したSaaS企業セールス部門での事例をもとに、個別型チームコーチングのプロセスと成果を紹介します。
2. コーチング導入の背景と目的
対象は、SaaSツール企業のセールス部門。上司1名とメンバー6名、計7名を対象に、半年間の個別型チームコーチングを実施しました。
背景には、成果プレッシャーによる心理的距離の拡大と、キャリアへの受け身姿勢という課題がありました。
上司は「どうすれば自律的に動けるチームになるのか」「組織として成果を上げるにはどうすればよいのか」という悩みを抱えており、私に相談がありました。
各メンバーが自分の理想と現状を可視化し、強みや価値観を起点に行動を変えていくプロセスを通じて、チーム全体のエンゲージメントを高めることを狙いました。
“個”の意識変化が“組織”を変える起点となる。このスタイルは、リモート中心の現代組織において特に有効です。
3. アプローチとプロセス
半年間にわたり、2〜3週間に1回のペースで一人あたり合計12回の個別セッションを実施しました。
各回では、キャリアの棚卸しに加え、「今、自分はチームにどんな影響を与えているか」「自分らしさをどう発揮できるか」といったテーマを中心に対話を深めました。
印象的な問いの一つは、「チームがあなたに期待している“らしさ”の発揮ポイントは何だと思いますか?」というものです。
この問いを通して、自分を外側と内側の両方から見つめ直す視点が生まれました。
「期待に応える」ではなく、「自分らしく貢献する」へと発想が変化し、内発的なモチベーションが高まっていきました。
初回は「何を話せばいいかわからない」という方もいましたが、回を重ねるうちに、行動の背景にある価値観が言語化され、「自分はこうありたい」という宣言が自然と生まれました。
こうして、個の内省が少しずつチームの関係性を動かしていきました。
4. 成果と変化
セッションが進むにつれ、個人の変化がチーム全体へと波紋のように広がりました。
理想と現状の可視化により、行動の優先順位が明確になり、目標設定と実行の整合性が高まりました。
「やらされ感」から「自分がやる理由」への転換が起こり、営業活動でも“目的意識をもった提案”が増加しました。
関係性にも明確な変化が見られました。
以前は「上司の意図を探る」「他者の意見を待つ」といった受け身の傾向が強かったメンバーが、自発的に会議をリードし、他者のアイデアを積極的に拾うようになったのです。
お互いの成果を称え合う声が増え、チーム内に心理的安全性が醸成されていきました。
エンゲージメントサーベイでは、「上司への信頼」「チーム内協働」「成長実感」の3項目で特に高い改善を示し、前年からの総合スコアは+15%を記録。
上司自身も「メンバーを動かそうとするマネジメント」から「信頼して任せるリーダーシップ」へと変化しました。
“見守るマネジメント”が生まれ、チームは安定的に成果を出し続けています。
5. 学びと成功要因
今回の成功要因は、「変化を急がず待つ姿勢」と「内省の共有設計」にありました。
個別型チームコーチングでは、表面的な行動変化よりも、本人の納得感を伴う内発的変化を重視します。
そのため、上司が“短期成果を求めない文化”を意識的に育てたことが、メンバーの主体性を後押ししました。
また、私は全員のセッションを俯瞰的に整理し、チーム全体に共通して現れたテーマ(例:「他者貢献」「挑戦」「信頼」)を、守秘義務を守った範囲で上司と共有しました。
この共有が、現場での対話をより深める触媒となりました。
コーチとして印象に残ったのは、「個の変化がチーム文化を形づくる」という実感です。
外発的な仕組みや制度ではなく、一人ひとりの内省と納得が、結果としてチーム文化を動かしていく——そのリアルを見た事例でした。
6.まとめ
個別型チームコーチングは、“一人ひとりの変化”を起点に、組織文化を動かすアプローチです。
研修や制度では届かない「意識と関係性の層」に働きかけ、チームが自走する力を育みます。
エンゲージメントや主体性に課題を感じている組織こそ、まずは個の内省から始めてみてはいかがでしょうか。
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髙瀬 智之
アパレル店舗統括として売上全国1位を達成。その後、人材ビジネス業界へ転身し、外資大手アデコにて50名〜100名規模のBPO案件を統括し、パーソルでは営業20名を率いて年商30億円を牽引。
将来を見据え、営業部門からDX部門へリスキルし、DX企画部門の責任者に着任。生成AIや法人間の業務提携、及び人的資本運営を推進。
20年以上の人材ビジネス経験で約4,000人以上のキャリア面談を実施。
現在は「人が本来持つ可能性を無理なく広げる」想いのもと、コーチングオフィスを設立し、パラレルワーカーとして活動。
30〜40代を中心に「本来の才能」と「経験・スキル」を融合したキャリア・リブランディングコーチングを提供中。
・国際コーチング連盟認定コーチ(ACC)
・銀座コーチングスクール(GCS)認定プロフェッショナルコーチ
・プロティアン認定ファシリテーター(プロティアン・キャリア協会)