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「空・雨・傘」を活用して伝わるメッセージを作る ~スライドメッセージ(T2)を磨く3つの型とは?~

ルバート代表の松上です。ルバートの研修では事前のアンケートで資料の課題について聞くことが多くあります。
その中でよくあるのが、「資料の主張が伝わらない」「なんとなく言いたいことはわかるけれど、読み手の心に残らない」といった声です。私自身、若手コンサルタント時代には、資料の主張やメッセージについては先輩に何度も赤入れされた経験があります。

本記事の執筆者
松上 純一郎マツガミ ジュンイチロウ
  • 株式会社Rubato代表取締役
  • 『PowerPoint資料作成プロフェッショナルの大原則』
    『ドリルで学ぶ!人を動かす資料のつくりかた』著者

その中で徐々に気付いたのは、「資料におけるメッセージには“型”がある」ということです。そしてこの“型”を意識することで、主張に説得力が増し、相手の心に届く資料に変わるのです。

今回はその中でも特に汎用性が高く、実践的なフレームワークである「空・雨・傘」をもとにした「スライドメッセージの3つの型」についてご紹介します。

 

空・雨・傘を活用した資料の作り方

「空・雨・傘」とは、コンサルティングの世界で古くから使われてきた問題解決の考え方です。空を見て(=事実を確認し)、雨を予測し(=事実を解釈し)、傘を持つ(=行動を決める)という一連の流れを示すもので、事実→解釈→行動という問題解決の順序を整理するうえでとても役に立ちます。


この「空・雨・傘」というフレームワークを実際に問題解決の場面で活用するのはよっぽど意識しないと難しいのですが、簡単に活用する方法があります。それは、何かを「伝える」場面においてこのフレームワークを活用するということです。特にパワーポイント資料では、このフレームワークをスライドの上部に書く、スライドメッセージ(キーメッセージ、T2とも呼ばれる)に活用すると資料の完成度が上がります

空・雨・傘を活用した三つのスライドメッセージの型をここではご紹介していきます。

問題提起に効く「事実型」メッセージ

まず一つ目は、事実を提示する「事実型メッセージ」です。これは問題解決の起点となる事実や背景を示すメッセージであり、「空が曇っている」「気温が低い」といった客観的な事実=ファクトを示すものです。

例:

・当社の売上は過去5年間で年平均2%ずつ減少している
・製品Aのリピート率は15%と、業界平均(25%)を大きく下回っている

資料作成の際、ここを飛ばしてしまう方が多いのですが、事実がなければ議論が噛み合わなくなり、空中戦になってしまうので、資料の序盤ではぜひ活用したいスライドメッセージの型になります。

「問題の背景は何か?」「なぜ今このテーマを扱うのか?」という問いに、客観的なファクトを交えたメッセージで答える。これが、読み手の信頼を得る第一歩になります。

問題の核心に迫る「解釈型」メッセージ

次に大切なのが、事実をどう見るかという「解釈型メッセージ」です。これは、「雨が降るかもしれない」といった状況の予測や背景にあることの解釈にあたります。

例:

・売上の減少は、競合A社の新商品がユーザーを奪っていることが主因と考えられる
・リピート率の低迷は、初回使用後の満足度が得られていない可能性が高い

事実は一つでも、解釈は人によって異なります。しかし、多くのビジネスパーソンがこの「解釈」をあまり資料に盛り込もうとしません。理由は明確で、「解釈には反論がつきものだから」です。実際、私自身も新人時代は「波風立てないように」と解釈に踏み込まず、無難な資料を作ろうとしがちでした。

でも、問題解決は「解釈」から始まります。リスクを恐れず、自分の見立てや考察をメッセージとして発信することで、議論が生まれ、解決への糸口が見えてくるのです。

実行を促す「行動型」メッセージ

そして最後の型が「行動型メッセージ」です。これは事実と解釈をもとに、具体的な判断やアクションを提案するメッセージです。

例:

・競合新商品への対抗策として、半年以内の製品改良版リリースを計画する必要がある
・製品Aの満足度低下の原因を明らかにするため、ユーザーインタビューを実施する

いくら現状を正しく理解していても、行動に結びつかなければ意味がありません。「次に何をすればよいか」を明確にすることで、スライドのメッセージが「説明」から「提案」までつながり、より価値のある提案になります。

スライドメッセージの型は組み合わせでも使える

「事実」「解釈」「行動」の3つの型は、それぞれ単独で使うこともできますが、組み合わせてスライドメッセージを構成すると、資料のストーリー性が格段に改善します。

例:

・当社の売上は過去5年間減少しており、要因としては他社の新商品の影響が大きい(事実+解釈)
・製品Aのリピート率低迷は今後も続くと予測されるため、原因調査のためのユーザーインタビューを実施する(解釈+行動)

このように、一つのスライドの中で各要素がつながっていると、読み手が「なるほど」と納得しやすくなります。また、「それならやろう」と行動に移しやすくなるのも大きなポイントです。

おわりに

今回は、スライドメッセージをより効果的に伝えるための「3つの型」についてお伝えしました。この「空・雨・傘」の考え方を使えば、単なる資料が「人を動かす資料」により近づくはずです。

まずは、自分の過去の資料やプレゼン内容を見返してみて、「これは事実型か?」「解釈が抜けていないか?」「行動型メッセージに落ちているか?」という観点でチェックすると、改善のヒントが見つかるはずです。「空・雨・傘」の3つの型、ぜひ取り入れてみてください。

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【本記事の執筆者】
松上 純一郎

同志社大学文学部卒業、神戸大学大学院修了、University of East Anglia修士課程修了。
米国戦略コンサルティングファームのモニターグループで、外資系製薬企業のマーケティング・営業戦略、国内企業の海外進出戦略の策定に従事。その後、NGOに転じ、アライアンス・フォーラム財団にて企業の新興国進出サポート(バングラデシュやアフリカ・ザンビアでのソーラーパネルプロジェクト、栄養食品開発プロジェクト等)や栄養改善プロジェクトに携わる。
現在は株式会社ルバート代表取締役を務める。組織の変革のためにはスキルとwillの両面からサポートすることが必要という考えから、ビジネススキル研修、そしてコーチングのサービスを提供している。