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「うまく話そう」より大切なこと~個々の特性を活かす話し方がプレゼンを変える

ルバート代表の松上です。
前回はロジカルシンキングにおけるロジックツリーの分解方法についてお話ししました。ロジカルに考え、整理しながら伝えることは非常に重要ですが、今回はその枠を少し広げ、「人に伝えること」そのものに焦点を当ててみたいと思います。

本記事の執筆者
松上 純一郎マツガミ ジュンイチロウ
  • 株式会社Rubato代表取締役
  • 『PowerPoint資料作成プロフェッショナルの大原則』
    『ドリルで学ぶ!人を動かす資料のつくりかた』著者

 

はじめに

皆さんは、プレゼンテーションやたくさんの人前で話すことに自信がありますか?多くの方が緊張や不安を感じ、「話すことが苦手」と思っているのではないでしょうか。実際、私たちが企業研修や大学での研修を行う中でも、そういった悩みを抱える方が多いことを実感しています。

そして、私たちは話し方の改善は、単なるテクニックの習得ではなく、「自分の強みを活かして伝える」という視点が非常に重要であると考えています。ここでは、話し方の改善における課題と、私たちが実践した「個人の特性を活かした話し方の指導」について詳しくご紹介します。

プレゼンテーションへの苦手意識と課題

私たちは6年ほど前からある私立大学と協力し、学生向けのプレゼンテーション資料作成講座を実施してきました。この講座を通して、多くの学生が資料作成のスキルを向上させ、ロジカルなストーリー構成や視覚的な伝え方を学んできました。

しかし、実際にプレゼンテーションを行う段階で、多くの学生が「うまく話せない」「緊張してしまう」「思ったように伝えられない」という課題に直面していました。

  • 緊張しすぎて言葉が詰まる
  • 話したいことが頭の中で整理できず、混乱してしまう
  • 声が小さく、相手に伝わりづらい
  • 話し方に自信が持てず、不自然な抑揚になってしまう

そこで、私たちは「話し方」そのものにフォーカスした新たな講座を開発することにしました。

「人に伝わる話し方講座」とその効果

「人に伝わる話し方講座」では、単なるテクニックの伝授にとどまらず、一人ひとりの学生にプレゼンテーションを実践してもらい、それに対して個別フィードバックを行うというアプローチを取りました。

この方法により、学生それぞれの課題が明確になり、「どの部分を改善すれば、より伝わる話し方になるのか」が具体的に分かるようになりました。結果として、学生たちは具体的なテクニックを習得し、話し方への苦手意識を少しずつ克服し、うまく内容を伝えることができるようになってきました。しかし、続けていく中で新たな課題も見えてきました。

画一的な話し方指導の限界

その課題とは、私が学生たちの話し方の技術の向上を目指すあまり、研修の内容が学生たちに一般的に「良い話し方」とされる話し方の技術を押し付けるような内容になってしまってきたことでした。例えば、

  • 大きな声ではっきりと話す
  • ハキハキと話す

といった画一的なスタイルを学生に目指させるようになっていました。講師陣の中でそれに対しての懸念が共有され、私自身以下のような課題を持つようになりました。

  • もともと穏やかな話し方が得意な学生が、無理にハキハキ話そうとすると不自然になるのではないか
  • 落ち着いたトーンで話す方が説得力が増すのに、明るいトーンを意識しすぎることでぎこちなくなってしまうのではないか

私はここで、「話し方の画一化は逆効果になる可能性がある」と気づきました。

個人の特性を活かしたフィードバックの重要性

そこで、指導方法を変更し、学生一人ひとりの特性を活かす形でフィードバックを行うようにしました。
例えば、

  • 小さな声でも、ゆったりと話せば伝わる学生には、丁寧さを打ち出す指導を行う
  • もともと落ち着いたトーンで話す学生には、ポイントを絞って落ち着いて伝える方法をアドバイスする

以下が、実際に研修で使用している様々な話し方のスタイルを示したスライドです。このスライドの話し方はあくまで例ですが、様々な話し方の良さがわかると思います。


このアプローチの結果、学生自身が自分の強みに気づき、それを伸ばすことで以前の指導法より、学生達がより自信を持って話せるようになってきました。

実際、多くの学生から

  • 自分の良さに気づけた
  • 話すことへの苦手意識が減った
  • 無理に変えようとしなくても、自分らしく話せばいいんだと分かった

といったポジティブな声が寄せられるようになりました。

もちろんテクニックは重要ですし、ある程度の改善は必要なのですが、それと同じくらい、自身の話し方の持ち味を理解し、それを生かして話すことを意識することで以前より、より大きな効果を発揮できるようになったのです。

ビジネスシーンへの応用

このアプローチは、企業のプレゼンテーション研修にも応用できます。
一般的に、ビジネスシーンでは「あるべき話し方」に統一しようとする傾向があります。
しかし、

  • その人の持ち味を活かしながら話し方を改善する
  • 個々の強みを伸ばす形でフィードバックを行う

ことで、より短期間で効果的な話し方を身につけることができます。

実際に支援した企業では、当初「ある研修のプレゼンターを外部に依頼しよう」としていたものの、このトレーニングを通じて、社員自身がプレゼンテーションを実施する自信を持ち、外部依頼が不要になった事例もありました。

まとめ:自分らしい話し方を見つける

「うまく話そう」とするあまり、自分の特性を無視してしまうと、かえって伝わりにくくなることがあります。大切なのは、「自分の持ち味を理解すること」、そして、「その良さを活かした話し方を見つけること」です。

これは自分ではなかなか気づきにくい部分もあるため、周囲のフィードバックを活用しながら、自分らしい話し方を探求してみてはいかがでしょうか?ぜひ参考にしていただければと思います。

 

【本記事の執筆者】
松上 純一郎

同志社大学文学部卒業、神戸大学大学院修了、University of East Anglia修士課程修了。
米国戦略コンサルティングファームのモニターグループで、外資系製薬企業のマーケティング・営業戦略、国内企業の海外進出戦略の策定に従事。その後、NGOに転じ、アライアンス・フォーラム財団にて企業の新興国進出サポート(バングラデシュやアフリカ・ザンビアでのソーラーパネルプロジェクト、栄養食品開発プロジェクト等)や栄養改善プロジェクトに携わる。
現在は株式会社ルバート代表取締役を務める。組織の変革のためにはスキルとwillの両面からサポートすることが必要という考えから、ビジネススキル研修、そしてコーチングのサービスを提供している。