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ロジックツリーはトップダウン型分解だけではうまくいかない~ボトムアップで俯瞰的な課題解決を目指す

ルバート代表の松上です。
前回は「オンライン定例会議を活性化する3つのポイント~カメラオン、アイスブレイク、そしてチャット活用」と題してオンライン定例会議を活発な場にする方法についてお伝えしました。今回は会議のファシリテーションの基本となるロジカルシンキングの考え方について書いてみたいと思います。

本記事の執筆者
松上 純一郎マツガミ ジュンイチロウ
  • 株式会社Rubato代表取締役
  • 『PowerPoint資料作成プロフェッショナルの大原則』
    『ドリルで学ぶ!人を動かす資料のつくりかた』著者

 

ロジックツリーを活用した課題分析と解決策の立案

ロジックツリーは、物事をロジカルに考える際に非常に有効なツールです。その種類は主に以下の3つに分けられます。

 1.課題を分析するためのロジックツリー
 2.解決策を立案するためのロジックツリー
 3.コミュニケーションのためのロジックツリー

今回は、この中から「課題分析のロジックツリー」と「解決策立案のロジックツリー」について解説していきます。

ロジックツリー作成の課題:トップダウン型分解の限界

ロジックツリーは、物事を抽象的なレベルから具体的なレベルまで異なる粒度で俯瞰することで、全体像を明確にする便利なツールです。しかし、ロジックツリーを作成する際に直面する課題の一つは、私たちがしばしばトップダウン型で課題を分解しようとしてしまうことです。
トップダウン型分解のアプローチは有効ではありますが、以下のような問題が発生することがあります:

 •レベル感が揃わない
 •ミーシー(MECE:漏れなくダブりなく)にならない
 •課題の全体像を描くのが難しい

特に一般の社員が組織の課題を扱う場合、このような問題が顕著です。


一般社員は通常物事を俯瞰的に見ると言う場面が少ないため組織レベルの課題を考えるときについつい自身が知っていたり、普段感じている課題をあげがちです。例えばこのような形になりがちです。


これでは会社の売上の減少の全体像を捉えることができていません。売上低下の本質的な原因は、以下のような別の要因にある可能性もあるからです。

 •新商品の投入遅れ
 •マーケティング施策の不備
 •商品の納期遅延

営業現場だけを見ていては、こうした課題は見逃されがちです。しかし普段営業の現場で目の前の課題と向き合っている人がこのような営業以外の課題に気付くことは非常に難しいと思います。

普段は全体を俯瞰するような業務内容を与えられていないのにもかかわらず、課題を考えるときだけ物事を俯瞰的に見ろと言われるのはかなり無理があるように思います。それでは自身が見える範囲でしか課題を理解することはできないのでしょうか。なんとか普段業務で見えている範囲以外の課題を想像できるようにはならないのでしょうか。

私がお勧めしているのはボトムアップの方法とトップダウンの方法を組み合わせるアプローチです。

ボトムアップ型とトップダウン型を交互に使うアプローチ

物事の課題について考えるときまずおすすめしたいのはボトムアップで考えていくアプローチです。具体的には以下のような流れになります。

1.ボトムアップ型でのアプローチ

①具体的な課題を挙げる

 o営業現場で感じる具体的な課題を挙げる。
 o例:「営業量が不足している」「若手の営業経験が浅い」など。

②グルーピングして抽象化

 oこれらを「営業に関する課題」としてグルーピングする。


ここからがポイントなのですが、一旦自分が見えている業務の中での課題を洗い出した後はそれ以外の課題の可能性を考えていきます。このときにポイントとなるのがフレームワークの活用になります。

2.フレームワークを活用して要素を他に広げる

フレームワークというのは情報の整理のために使われることが多いのですが、実は自分が気付いていないことに気づくためにも非常に有効なのです。ここでは営業以外の機能の課題も考えていきたいので営業以外の要素が出せるフレームワーク「バリューチェーン」に当てはめていきます。

バリューチェーンは経営学者マイケル・ポーターが提唱したもので、会社のサービスや製品の付加価値がどの機能から生み出されているかを分析するためのツールです。このバリューチェーンというフレームワークを使うことで以下のような観点から課題を洗い出すことが可能になります。

 •商品開発:新商品の投入が遅れていないか?
 •マーケティング:プロモーション施策が機能しているか?
 •物流:納期遅延が発生していないか?

このように機能別の課題を抽出することで、営業以外の視点を含めた広い視野で課題を考えることができます。


3.トップダウン型での分解

次に、トップダウン型で課題を分解します。例えば、売上を以下のように分解します:

 •商品別売上
 •数量 × 単価

この分解結果と先ほどの機能別課題を結びつけることで、課題の全体像を明確にすることが可能になります。


おわりに

いかがだったでしょうか。課題分析や解決策の立案を行う際には、トップダウン型分解だけでなく、ボトムアップ型を併用することで全体像を捉えやすくなります。また、バリューチェーンなどのフレームワークを活用することで、見落としがちな課題も浮き彫りにすることができます。これらのアプローチを活用して、より効果的なロジックツリーを作成し、課題解決につなげていきましょう。

Rubatoではロジカルシンキングの手法を実践的にお伝えする公開講座「課題解決のためのロジカルシンキング」を定期的に開催しています。また、個人向けの講座として「ロジカルシンキング講座」「ロジカルコミュニケーション講座」の2回に分けて開催しています。もしご興味がある方がいらしたらぜひご参加ください。

 

【本記事の執筆者】
松上 純一郎

同志社大学文学部卒業、神戸大学大学院修了、University of East Anglia修士課程修了。
米国戦略コンサルティングファームのモニターグループで、外資系製薬企業のマーケティング・営業戦略、国内企業の海外進出戦略の策定に従事。その後、NGOに転じ、アライアンス・フォーラム財団にて企業の新興国進出サポート(バングラデシュやアフリカ・ザンビアでのソーラーパネルプロジェクト、栄養食品開発プロジェクト等)や栄養改善プロジェクトに携わる。
現在は株式会社ルバート代表取締役を務める。組織の変革のためにはスキルとwillの両面からサポートすることが必要という考えから、ビジネススキル研修、そしてコーチングのサービスを提供している。