me:Riseキャリアコーチの山崎です。
プロコーチとしてビジネスパーソンのリーダーシップ開発を支援しています。
1.育成に関するご相談事例
コーチとして多くの中間管理職の方々をコーチングさせていただく機会がありますが、頻繁に聞かれるのが、
「どうすれば部下の主体性やモチベーションを引き出せるのか」
「なかなか行動が変わらない」
「コミュニケーションがうまくいかない」
というお悩みです。管理職として結果を出すプレッシャーと、メンバーやチーム全体を成長させる責任を感じながら、どのようなコミュニケーションをとっていくかに頭を悩ませている。こういった方も多いのではないでしょうか。
2.コーチングセッションでコーチが実際に問いかけていること
前述した育成のお悩みもテーマとしてコーチングセッションで扱うわけですが、コーチは「マネージャーとしてどうあるべきか」「何を達成すべきか」「現在何を課題と捉えているか」「課題をクリアするために何をしていくか」という現状の問題・課題を特定し、解決していく問いかけはあまりしていません。代わりに、
「あなたはどのように人生を生きたいですか」
「どのような自分になりたいですか」
「周囲にどのような影響を与えていきたいですか」
といったパーソナルビジョンを掘り下げることから始めます。
3.コミュニケーションパターンによる違い
パーソナルビジョンから関わることの効能として、持続的な成長や変化を引き出せることが挙げられます。
仮に、前述した現状の問題・課題を特定していくコミュニケーションをとると、変化が持続しないという研究があります。
“するべきこと”や“外部からの期待”をトリガーにした対応や自分の弱みや課題に焦点を当てるコミュニケーションではNEA(Negative Emotional Attractor)といって、不安や怒り、罪悪感といったネガティブな感情を呼び起こして、目の前のタスクや課題の解決を促すと言われています。
部下の成長やパフォーマンスを引き上げることを目的に、このような関わり方をする場合もあると思います。現状をより良くしていくために一見良い関わりのように見えますが、実際には交感神経が刺激され、不安やストレスが増強されてしまうため、長期的な行動変容は難しくなってしまうのです。
問題解決の速度としては早いかもしれませんが、ビジネスにおいて長期的な成長や変化を達成していくという視点に立つと効果的とは言えません。
4.持続的な成長や変化を引き出す
一方で、「あなたはどのような自分になりたいですか」といった問いかけや関わりは、ポジティブな感情を引き出します。
NEAに対してPEA(Positive Emotional Attractor)といいますが、人の希望や喜びの感情と結びついてポジティブな感情を呼び起こします。こうした感情が、副交感神経を刺激して持続可能な成長を促進すると言われています。
「どのような人間になりたいのか」「人生をどのように生きたいのか」といった問いかけは、一見、職場やビジネスの現場からはかけ離れた内容に聞こえるかもしれません。
しかし、意図的変革理論(ICT)では、持続的な行動変容の第一歩として「理想の自分像」を明確にすることが重要だと示されています。この理論は、個人や組織の変化を成功させるための基本的な枠組みを示したもので、特にコーチングやリーダーシップ開発の分野で応用されています。
「どのような人間になりたいのか」「人生をどのように生きたいのか」という問いに答えを出すことが、行動変容の基盤になるというものです。
私たちは、変化に適応しながら持続的に成長を続けていくことが求められています。そのためには、まず働く個々人が自分自身のビジョンを明確にし、内面的な変化を起こすことが不可欠です。
理想の自分を言葉にし、喜び・感謝・好奇心といった感情を引き出すことで、個人の内面的な成長が促され、持続可能な変化につながっていきます。その変化がメンバーのモチベーションや意欲を育て、行動の変化や成長、成果を促し、組織全体のパフォーマンスを向上につながる一歩となります。
日々責任やプレッシャーを感じながらも育成にあたる中で、「どうやったら部下の主体性やモチベーションを引き出せるのか」「なかなか行動が変わらない」といったお悩みをお持ちの管理職の方々がいらしたら、ご自身、また部下に対して「どのような自分になりたいのか」を考え、問いかける機会を作ってみていただきたいと思います。
コーチングを通じて、管理職の皆さんがより豊かな人生を歩み、その影響を周囲に広げていけるよう、これからもサポートしていきたいと考えています。
参考書籍:
『成長を支援するということ――深いつながりを築き、「ありたい姿」から変化を生むコーチングの原則』/著者:リチャード・ボヤツィス他
山崎 奈央
リクルート社でHRサービスの営業を経験後、人事コンサルティング会社で多数のコンサルティング案件やプロジェクトマネジメント、織開発・人材育成案件に携わる。個のリーダーシップを引き出すことで個と組織にとって良質で発展的な成長や成果に繋がることを体感する。
2018年にコーチ養成機関CTIジャパンにてプロ資格を取得しプロコーチの道へ。パラレルワーカーとして活動後、出産・子育てを機に独立。現在はパートナー企業とともにコーチング、研修を通じてビジネスパーソンのキャリアやリーダーシップ開発、組織開発を支援している。
・国際コーチ連盟認定PCC(Professional Certified Coach)
・CTI認定 CPCC®(Certified Professional Co-Active Coach)
・一般社団法人ワークショップデザイナー開発機構 認定ワークショップデザイナー