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チーム全員で成果を作る会議術~ファシリテーターだけに頼らない会議を実現する~

ルバート代表の松上です。前回は会議での対立の場面をテーマにして、建設的な議論を導くためのファシリテーションのポイントを書きました。今回も引き続き会議ファシリテーションについて書いてみようと思います。

本記事の執筆者
松上 純一郎マツガミ ジュンイチロウ
  • 株式会社Rubato代表取締役
  • 『PowerPoint資料作成プロフェッショナルの大原則』
    『ドリルで学ぶ!人を動かす資料のつくりかた』著者

 

理想的なファシリテーションの形とは?

このブログでは過去数回にわたって、ファシリテーションの様々なテクニックをお伝えしてきました。その中で、ファシリテーションは実はセンスではなく、スキルであるということがわかっていただけたのではないでしょうか。つまり、ファシリテーションの具体的なスキルを習得すれば誰でもファシリテーションが上手になるのです。

ただ、ファシリテーションが上手になることでの弊害があります。それは、ファシリテーターの技術が高いと、参加者側の、「会議を共に作ろう」という意識や努力が減っていくことです。「会議を共に作る」意識が低いと自分の意見を言うことに集中してしまい、結果として会議のアウトプットの質が下がることが起こりがちです。せっかく会議のアウトプットを上げるためにファシリテーションの技術を高めたのに、その結果として会議の質が下がってしまっては本末転倒です。かと言って、ファシリテーターがわざと手を抜くのもまた違うように感じます。どうすれば良いのでしょうか。


私は会議に参加している全員がファシリテーターであるという意識を持つということが一つの答えになるのではないかと考えます。参加者全員が会議の目標とアジェンダと時間を意識し、他者の発言を傾聴し、必要があれば他者に質問するということをすれば、会議は最も効率的で成果が出るはずです。

ファシリテーターの役割を交代で担う

一方で、参加者全員がファシリテーターの意識を持つというのは大変難しいことのように思います。ルバートでは一つの試みとして、週次や月次の定例会議のファシリテーターを会議参加者で順番に担当することを実践しています。これは私が過去に大学生向けのプログラムに引率として参加した時に、定例mtgのファシリテーターを参加者内で回すことで、参加者がファシリテーターの大変さを理解し、サポートし合うようになることを経験したことがきっかけとなっています。


ファシリテーターの役割を交代で担うことで実際に得られる効果は以下の通りです。

視野が広くなる:自分の担当業務外のことについてもファシリテートする必要があるので、チーム全体を見渡す意識を持つようになる。
ファシリテーターに協力的になる:会議の運営をすることでファシリテーターの大変さがわかるので、参加者として出た時もファシリテーターに対して協力的になる。例えば、ファシリテーターが「次に進んで良いですか?」と聞いた時に沈黙ではなく、「はい」という声が自然に出るようになる。
会議を進める意識が高まる:ファシリテーターの経験があるので、会議を前に進める意識が高まる。例えば、議論が膠着した時に、「時間も限られているので、一旦この議論は保留にして、次のアジェンダに行きませんか。」という声が参加者が出るようになる。

上記に加えて、個人のファシリテーターとしてのスキルも上がるので様々な話し合いの場面でのファシリテーション力が上がり、結果的に生産性が上がるように感じています。

通常は経験を積んだ社員からファシリテーションを任せようと考えがちですが、新入社員や中途社員にあえてファシリテーターを担ってもらうことで、チームや組織全体を見渡す経験になり、オンボーディングが早まるという効果も期待できます。

ファシリテーターの役割を回すポイント

当然ファシリテーションにはそれなりの技術が必要なので、いきなり役割を任してもうまくいきません。ルバートではファシリテーションを回す場合は、ある程度定型のアジェンダが決まった定例会議を対象にするようにしています。

アジェンダが決まっていれば、ファシリテーターはそれに沿って進めればよいので比較的ファシリテーションの難易度が低いからです。また、アジェンダ内での進め方もできるだけ明文化してファシリテーター任せにしないようにしています。そうやって固められる部分を定型にすることで、他の議論の部分にファシリテーターが集中できるようになります。

ルバートではこの取り組みを始めた当初、会議時間が大幅にオーバーしてしまったり、ファシリテーターが緊張からうまく進められないことも多くありましたが、経験を重ねることで着実に皆のファシリテーションの技術が上がり、現在では初めての会議のファシリテーションでもこなせるようになってきています。そして先ほど書いたようにファシリテーター意識を持った参加者として会議に参加するので会議の生産性が着実に上がっています。

おわりに

ファシリテーターの意識を持った会議参加者育成のための取り組みの話、いかがだったでしょうか。「会議を共に作る」意識を醸成するためにはもちろん他の方法もあると思いますが、人材育成の一つの取り組みとしても「ファシリテーターの役割を回す」ことにチャレンジしてみるのはいかがでしょうか。

Rubatoでは今回の内容をより実践的にお伝えする公開講座「会議ファシリテーション」を定期的に開催しています。また、個人向けの講座として前編後編の2回に分けて開催しています。もしご興味がある方がいらしたらぜひご参加ください。

 

【本記事の執筆者】
松上 純一郎

同志社大学文学部卒業、神戸大学大学院修了、University of East Anglia修士課程修了。
米国戦略コンサルティングファームのモニターグループで、外資系製薬企業のマーケティング・営業戦略、国内企業の海外進出戦略の策定に従事。その後、NGOに転じ、アライアンス・フォーラム財団にて企業の新興国進出サポート(バングラデシュやアフリカ・ザンビアでのソーラーパネルプロジェクト、栄養食品開発プロジェクト等)や栄養改善プロジェクトに携わる。
現在は株式会社ルバート代表取締役を務める。組織の変革のためにはスキルとwillの両面からサポートすることが必要という考えから、ビジネススキル研修、そしてコーチングのサービスを提供している。