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空雨傘で解決!会議がもっとスムーズになるファシリテーション術

ルバート代表の松上です。前回は会議ファシリテーションの目的の設定の仕方、そして論点の出し方など、会議の設計について書きました。今回は実際の会議の中でのファシリテーションのポイントについて空雨傘のフレームワークの観点から書いてみたいと思います。

本記事の執筆者
松上 純一郎マツガミ ジュンイチロウ
  • 株式会社Rubato代表取締役
  • 『PowerPoint資料作成プロフェッショナルの大原則』
    『ドリルで学ぶ!人を動かす資料のつくりかた』著者

 

空雨傘とは?

「空雨傘」とは、外資系コンサルティング会社のマッキンゼーの日本支社が開発した問題解決のフレームワークです。


このフレームワークでは、問題に取り組む際に空・雨・傘の順番に考えていくことを提唱しています。「空」とは「事実」を確認することを意味します。つまり「空を見て天気を確認する」ことになります。ここでは仮に曇りだったとしましょう。

次に、「雨」とはその事実を「解釈」することを意味します。ここでは「曇りだから雨が降るだろう」と解釈しています。そして最後に、「傘」は「行動」(判断)を示します。つまり「雨が降るだろうから傘を持っていこう」ということです。

この「事実」→「解釈」→「行動」の順番に考えていくことは問題解決の基本的な考え方になります。

このフレームワークは問題解決のプロセスや、プレゼンテーションの構成を考える際に役立ちます。それに加えて、私はこのフレームワークを会議のファシリテーションにおいて活用することを皆さまにおすすめしています。

空雨傘を会議で活用する

空雨傘の会議のファシリテーションでの活用方法には二つあります。一つが会議の流れを空雨傘の順番で進めることです。もう一つが参加者の発言を空雨傘のフレームワークに当てはめることで、発言の整理をすることです。

この空雨傘のフレームワークは課題解決の基本的な流れである、課題分析から解決策立案にちょうど当てはまりますので会議の流れを考える際にとても有効です。

空雨傘の「空」と「雨」は課題となっていることの事実と解釈を明らかにするということなります。まずどういう事実があって、それをなぜ課題と感じているのか、を参加者に確認していく作業になります。その上で「傘」、つまり「行動」(対策)を決めていきます。この流れで会議を進めると、事実と解釈と行動(対策)がつながるので、原因に対してきちんと対策を考えることができます。

会議の議論では課題の原因を究明する前に「どう対策するんだ?」と「傘」(対策)の議論が中心になったり、事実を確認せずに「自分は◯◯が問題だと感じている」という「雨」(解釈)の話が中心になりがちですので、ぜひ会議参加者に最初に空雨傘のフレームワークで進めることを伝えてみましょう。効率的な会議になると思います。(この空雨傘の流れは、ブログ「問題解決には三種類のロジックツリーを使いこなす~ロジカルシンキングの実践的活用法~」で記載している課題分析のロジックツリーから解決策立案のロジックツリーの流れと同様です。)

もう一つの「空雨傘」の会議ファシリテーションの活用方法は、発言の整理です。会議では色々な種類の意見が様々な抽象度で発言されます。そのため何が重要な発言かがわからなくなり、結果として声が大きい人の意見が通ってしまったり、上位者の意見が重要視される傾向があります。

そこでおすすめなのが、会議参加者の発言を「空雨傘」のフレームワークに当てはめてみることです。つまり、その発言が「事実」に関する発言なのか、「解釈」の発言なのか、なんらかの「対策・行動」の発言なのかを自分なりに聞きながら分類するのです。


この3種類に分けた時に重要なのは、まず「事実」に関する発言です。例えば「クレームのメールが前年より◯◯%増えている」「アルバイトの平均勤続年数が◯◯年減少している」などの発言です。事実は誰から見ても動きようがないことですので、重視するようにします。

一方で「解釈」に関する発言はきちんと事実を踏まえたものであれば大事ですが、事実を踏まえていない「感想」レベルのものも含まれるので注意が必要です。そして「対策・行動」に関する発言は事実を踏まえた課題にきちんと対応しているかを確認するようにします。


このように発言を分類することで、誰が重要な発言をしているかが見えてきやすくなります。会議のファシリテーターとして会議の運営を行う場合にはぜひこの「空雨傘」で発言を分類して、頭の中を整理するようにしましょう。(一方で、自分の発言に事実っぽい適当な数字を混ぜることで説得力を増そうとする人がたまにいますので、そういう人には注意が必要です。「あれ?」と思ったら数字をインターネットなどでチェックするようにしましょう。)

おわりに

会議ファシリテーションでの「空雨傘」の活用の仕方、いかがだったでしょうか。こんがらがった議論でも何が事実で何が解釈かということに注目することで意外とシンプルな解決策が見えるようになることがありますので、ぜひ活用してみてください。

Rubatoでは今回の内容をより実践的にお伝えする公開講座「会議ファシリテーション」を定期的に開催しています。もしご興味がある方がいらしたらぜひご参加ください。

 

【本記事の執筆者】
松上 純一郎

同志社大学文学部卒業、神戸大学大学院修了、University of East Anglia修士課程修了。
米国戦略コンサルティングファームのモニターグループで、外資系製薬企業のマーケティング・営業戦略、国内企業の海外進出戦略の策定に従事。その後、NGOに転じ、アライアンス・フォーラム財団にて企業の新興国進出サポート(バングラデシュやアフリカ・ザンビアでのソーラーパネルプロジェクト、栄養食品開発プロジェクト等)や栄養改善プロジェクトに携わる。
現在は株式会社ルバート代表取締役を務める。組織の変革のためにはスキルとwillの両面からサポートすることが必要という考えから、ビジネススキル研修、そしてコーチングのサービスを提供している。