ブログブログ

現状に悩むマネージャーの視点を変えたコーチング事例


≪目次≫
1.気付きはどこから生まれるか?
2.いつもと違うモノを見る
3.いつもと違うポジションから見る
4.まとめ

本記事の執筆者
高橋 明久タカハシ アキヒサ
  • アナザーヒストリー プロコーチ養成スクール 認定コーチ
  • CALC(認定アクションラーニングコーチ)
  • TOILABプラクティショナー
  • メンタルマネジメントスクール 認定心理カウンセラー ベーシック 認定番号0142

 

1.気付きはどこから生まれるか?

キャリアコーチングでも様々なテーマを扱っていますが、クライアントさんに有意義な気付きを得てもらうためにコーチが行っていることは非常にシンプルです。それは気付きが、

①いつもと違うモノを見る
②いつもと違うポジションから見る
③いつもと違うやり方で見る

ことから生まれることを知っているからです。

今回はセッションの実例(守秘義務の観点からその内容は変更)を交えながら、①いつもと違うモノを見る、②いつもと違うポジションから見ることについてご紹介させてください。

2.いつもと違うモノを見る

この先自分が何をやりたいのかわからないとお悩みだった課長Yさん(40歳)。うまく進んでいない現在の仕事や人間関係の不安から、将来の目標が見出せないといった中でのお申し込みでした。

そこで、現状の話を聞くことは敢えてせず、これまでのキャリアのお話から伺うことにしました。(いつもと違うモノを見るためのリードです)

(1)志望動機

私:「そもそも、今の会社に入社した動機は何だったのですか?」

Yさん:「今訊かれるまで忘れていましたが、元々〇〇業界に興味があり、この会社ならその分野で世界に誇れる仕事ができるのではないかと考えたからです」

私:「なぜ、そのように思われたのですか?」

Yさん:「私は田舎の出身で、都会と田舎だとかなり得られる情報や機会に差があって、それでかなり苦労してきたので」

私:「そんなYさんが、この会社での仕事を通して実現したい世界ってどんな世界なのですか?」

Yさん:「世界中どこでも誰でも、同じ情報やサービスが等しく受けられる世界です」

と、こんな感じの会話でした。

”志望動機”には何らかの肯定的な目的が含まれていることが多いため、将来のキャリアを描く上で、1度は探っておきたい引き出しです。

(2)充実体験

私:「あの時が1番充実していたと感じるお仕事はどんなことですか?」

Yさん:「2年前までやっていた人事の仕事。しんどかったですが、とても楽しかったなと感じます」

私:「何が楽しかったのですか?」

Yさん:「考え方の異なる海外メンバーとの関わりが多く、日々様々な発見がありましたし、新しい知識を次から次へ学び続けなければいけなかったので」

私:「Yさんにとって、何が”充実”と強く紐づいているのですか?」

Yさん:「やはり、成長ですね。元々開発出身で人事は畑違いの仕事だったのですが、成果を出そうと必死に学び続けたことが、後から思うと成長に繋がったと思えているのが嬉しいです。しんどかったですけどね(笑)」

と、こんな感じでした。

”充実体験”には大事にしたい価値観が含まれていることが多く、キャリアを描く上で必ず開けておきたい引き出しです。

(3)人間関係

私:「最後にもう1つ伺いたいのですが、これまでの仕事で最高のチームって、誰と仕事をしていた時ですか?」

Yさん:「先ほどの人事の仕事をしていた時の上司は、凄く尊敬できる方でした」

私:「どんな所を尊敬しているのですか?」

Yさん:「全く初めての仕事でしたが、でも、私のことを信じて見守ってくれていたので。勿論、必要な時には適切な助言もくれました」

私:「Yさん的には、どんな点を1番見習いたいですか?」

Yさん:「いつも私の考えを尊重してくれて、常に横の関係性で関わってくれた点です」

と、こんな感じでした。

仕事が嫌になる理由で最も多い原因の1つが”人間関係”です。どんな方と一緒にいると自分らしくいられるのか、そして、あなた自身はどんな存在であり在りたいのか。これも将来のキャリアを描く上で大事な鍵です。

3.いつもと違うポジションから見る

ここまでのお話を通して、Yさんのお人柄や価値観が見えてきました。それと同時に、Yさんも、改めてご自身の大事にしたいことに気付かれた様子でした。

・世界中どこでも誰でも、同じ情報やサービスが得られる世界を築きたい。
・しんどい時こそ、成長のための努力を大事にしたい。
・仲間の考えを尊重しながら、横の関係で関わりたい。

そんなYさんに、いつもと違うポジションから現状を見つめ直してもらうために、こんな質問を投げかけてみました。

私:「先ほどお聞かせいただいたようなことを全て実現している将来のYさんが、もし現在のYさんにアドバイスしてくれるとすると、どんな助言を与えてくれそうですか?」

Yさん:「・・・」

この質問は、慣れていない方には違和感を生むかもしれませんが、本人に高い納得感と有益な気付きを与えてくれるアプローチです。なぜならば、本来こうありたいと願う理想の自分から送る自分自身へのアドバイスなのですから。

するとYさんは、大きく息をついた後で、ゆっくりと語り始めました。

Yさん:「私には・・・覚悟が足りなかったみたいです・・・。今のチームは連携があまりできていなくて・・・ビジョンとか互いの意見もあまり共有できてなくて・・・。私が大事にしたい世界観とは逆ですね・・・。そんな中で私はメンバーに横の関係で関わりたいと思っているのに・・・でも、上司の私がメンバーに距離を感じていて・・・改善のためのアクションは何も出来ていなくて・・・。私も、コーチングを学びたくなりました」

私:「では、現状を改善するために、まず何からやってみるのが良さそうですか?」

Yさん:「来週、メンバーとの面談があるので、そこで普段感じていることや考えていることなどを少し聴く時間を持ってみます」

私:「それ、本当にやりたいですか?」

Yさん:「はい、やります!!」

私:「やってみると、良い方向に動きそうですか?」

Yさん:「やってみないとわからないですが、悪い方向には行くことは無いです」

と、こんな感じのセッションでした。

いつもと違う立ちポジション(こうありたいと願う理想像)から現状の自分を見つめ直すことで、本当にやってみたいと思える行動案を探してみる、コーチングでよく行う進め方の1つです。

4.まとめ

今回は、視野を広げるためにいつもと違うモノを見ること、いつもと違うポジションから見ることの大切さについてお伝えさせていただきました。

同じ環境に長く身を置いていると、自分にとって本当に大事なことを忘れてしまうのが普通です。苦しい状況に置かれていると、こうしなければいけない、これはできないといった思い込みがあなたの思考や行動に無意識に制約をかけ、柔軟な発想を採り難くしてしまうのが普通です。

だからこそ、いつもの考え方や人間関係から敢えて視点を離して考えてみることが、抜本的な解決策や本当にやりたいことを見出すためには効果的なのです。

いかがでしたでしょうか。
この内容が少しでも皆様のお役に立てましたなら幸いです。

 

【本記事の執筆者】
高橋 明久

大手医療機器メーカーに在籍し、設計開発から米国駐在でのマーケティングを経て、現在は品質保証に従事。昔から”イキイキしたチーム”を目指して取り組むも空回りの連続だったが、コーチングと出会い試行錯誤する中でその風向きが変化。現在は社内の組織風土改革をリーダーとして推進する傍ら、会社員を中心にコーチングを提供。自身の経験を通じて得た知識も共有し、キャリア開発のみならず、職場の人間関係や組織開発、子育て、夫婦関係などの悩み相談にも対応。菩薩のような穏やかな関わりにも定評あり。

・アナザーヒストリー プロコーチ養成スクール 認定コーチ
・CALC(認定アクションラーニングコーチ)
・TOILABプラクティショナー
・メンタルマネジメントスクール 認定心理カウンセラー ベーシック 認定番号0142