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無駄な会議を減らす!成果を生むファシリテーション術~目的と論点の設計で会議の質を劇的に向上させる~

ルバート代表の松上です。前回はロジカルシンキングの基本であるロジックツリーの種類と活用の仕方について書きました。今回はロジックツリーを具体的に活用する場面として会議でのファシリテーションを取り上げます。

本記事の執筆者
松上 純一郎マツガミ ジュンイチロウ
  • 株式会社Rubato代表取締役
  • 『PowerPoint資料作成プロフェッショナルの大原則』
    『ドリルで学ぶ!人を動かす資料のつくりかた』著者

 

会議は日々のビジネスにおいて欠かせないものですが、私は今まで多くの会社でコンサルタントとしてプロジェクトを進める中で、会議に関係者がただ集まって話し合うだけで、ただ時間が浪費される様子を何度も見てきました。

コンサルタントは企業の経営課題を深ぼり、意思決定を行うために経営層や現場と多くの会議を行うため、会議ファシリテーションのスキルを叩き込まれます。だからこそ会議ファシリテーションのスキルの有無で会議の生産性に大きな違いが出ることを私は身をもって感じてきました。

今回は、ファシリテーションの役割、会議の目的設定、そして論点設定の重要性について書いてみたいと思います。今回も研修の中でしかお伝えしていない内容ですので、ぜひ参考にしていただければと思います。

会議の目的とは?

ファシリテーションについて考える前に、そもそも会議とは何のために行うのかを考える必要があります。まず一つ目の会議の目的は、「複数人が集まってアウトプットの質を高めること」を目指している点です。会議には「意思決定をする」「情報共有を行う」「アイデアを出す」「議論を深める」など、さまざまな目的がありますが共通するのはアウトプットの質を高めるという点です。

忘れられがちなのですが、実は会議には二つ目の目的があります。それは、会議のプロセスを通じて、メンバーの理解度を上げ、納得感を醸成することです。会議を効率的に行って合理的な解にたどり着いたとしても、参加メンバーが理解しておらず、納得していなければその後の実行プロセスに支障が出てしまいます。これでは会議の目的が達成されたとは言えません。参加しているメンバーが内容を理解し、納得感を持つことが会議では大変重要なのです。


会議でのファシリテーションとは?

会議の目的を踏まえると会議でのファシリテーターの一つ目の役割は、会議でのアウトプットを最大化するために会議の効果的な進行を設計し、サポートするということになるかと思います。もちろん設計通りに会議は進みませんので、時には議論が脱線しないように軌道修正を行い、また参加者が対立した場合には仲介役として介入する必要があります。

そして二つ目の役割は、メンバーの納得感を醸成するために、参加者の意見やアイデアを最大限に引き出すということです。なぜ納得感の醸成のために意見を出してもらうことが必要なのか?これは会議で自分の意見を発言すると、結論はどうあれ、「自分は会議に参加した」という感覚を持ちやすいからです。会議に出て発言しない人はこの「会議を共に創った」感覚が薄くなり、結果的に納得感が下がる傾向があります。

「コト」の合理的な結論を出してアウトプットの質を高めること、そして「ヒト」の納得感を作ってその後のプロセスの成功確率が高まるようにすること、それがファシリテーターの役割と言っても過言ではありません。

それでは具体的にどのようにファシリテーションすれば上記の二つの目的が達成されるのでしょうか。実は、会議の目的設定と論点設定にそのカギがあります。


会議の目的の設定

会議のファシリテーションで最も重要なことは会議の目的を設定することです。目的とは会議が終わった時にテーマがどこまで到達しているかを設定することです。さきほど会議ファシリテーションの目的を「コト」と「ヒト」の二つに分けて説明しましたが、目的も同様に大きく二つに分けて設定します。

「コト」の目的設定については、①議論する「テーマの状態」と②次の会議に向けての「アクション」がどのようなものになっているかを設定することになります。例えばこのような形です。

①テーマの状態:問題の原因の候補が複数挙げられている
②次の会議に向けてのアクション:問題の原因候補をデータ分析する

そして「ヒト」の目的設定については、③参加者がどのような状態(理解度と感情)になっているかを設定します。例えばこのような形です。

③参加者の状態:挙げられた原因の候補のどれが本当の原因かを知りたい・探りたいという好奇心が生まれている状態

このうち目指す「テーマの状態」については必ず会議の冒頭で、ファシリテーターから参加者に共有するようにしましょう。これにより、参加者自身が会議中の自身の発言や提案が会議の目的達成に向けたものであるかを意識することができます。目指す「テーマの状態」を共有しないまま会議を進行すると、議論が散漫になり、最終的な結論も曖昧になりがちです。
一方で、次の会議に向けてのアクションについては会議の流れによって想定していたものと異なる可能性があるのでメンバーに共有する必要はありません。また、参加者の状態についてはファシリテーター自身が理解しておけばよいものですので、こちらも共有する必要はありません。会議の冒頭に共有すべき内容についてはブログ「会議は最初の5分で決まる~3つのポイントで生産性を上げる~」を参考にしてみてください。


会議の論点の設定

会議の目的が設定できたら次に会議の論点を設定します。会議の論点はロジックツリーを活用して設定していきます。基本的には会議のテーマをロジックツリーで細かく分解して、より議論すべきポイントを論点として設定します。ロジックツリーの作り方については前回のブログ「問題解決には三種類のロジックツリーを使いこなす~ロジカルシンキングの実践的活用法~」を参考にしていただければと思います。


例えば、新卒社員の採用を行っている企業があったとします。その企業の新卒社員の採用が前年を20%下回り、この状況を改善するために、来年度の施策を検討しているとしましょう。まずは「なぜ前年を20%下回ったのか」を分析する必要があります。そこで課題を分析するロジックツリーを作成していきます。

ロジックツリーの分解は課題仮説が見える切り口にしつつ、四則演算やビジネスフレームワークなどを駆使して行う必要があります。ここでは、「応募人数が少なかったのではないか?」、「採用率が低かったのではないか?」という外部的な要因と内部的な要因に分けています。


その上でデータで検証できるところは数字で検証していきます。その結果、課題仮説(=有力な論点)が見えてきたので、これらを会議の論点に設定していきます。


ここで重要なことは、会議の論点は会議参加者の意見で解決できたり、内容が深まったりする可能性があるものにすべきだということです。そもそもデータを見た方が早いことを皆で議論することは時間の無駄になりますし、参加者の意欲を削ぐことになります。

会議ファシリテーションのマインド

会議ファシリテーションの重要なポイントの二つ、目的設定と論点設定をご紹介しましたが、恐らく「手間がかかるものだな」と思われたと思います。実はその通りで会議ファシリテーションは設計の段階が最も手間がかかるものです。一方で適切に設計すれば、会議は驚くほどスムーズに進行します。

多くの人は会議のファシリテーションは会議の最中に行われるものだと思っていますが、実は会議ファシリテーションの9割は会議前の設計段階で終わっているのです。このことを私は「会議ファシリテーションは事前設計が9割」といつも伝えています。そして、事前の会議設計を重ねるとその準備時間は徐々に削減され、最終的には会議のその場で設計することも可能になってきます。

ぜひ会議ファシリテーションのスキルを身に着けるために、会議の事前設計から開始していただくと良いのではないかと思います。

おわりに

いかがだったでしょうか。会議ファシリテーションの大事なポイントについて今回はお伝えしました。会議の目的と論点、この二つを設計するだけで劇的に会議は効率的になり、自身の会議の場でのファシリテーションも楽になっていきます。ぜひ活用してみてください。今回は主に会議の設計について書きましたが、会議の中で参加者に発言してもらうためのコツについてはブログ「会議で発言が出ない時どうするか~発言してもらうためのファシリテーション」やプロコーチの橋本が書いたブログ「職場でのミーティングが活性化する3つの工夫」を参考にしてみてください。

Rubatoでは今回の内容をより実践的にお伝えする公開講座「会議ファシリテーション」を定期的に開催しています。もしご興味がある方がいらしたらぜひご参加ください。

 

【本記事の執筆者】
松上 純一郎

同志社大学文学部卒業、神戸大学大学院修了、University of East Anglia修士課程修了。
米国戦略コンサルティングファームのモニターグループで、外資系製薬企業のマーケティング・営業戦略、国内企業の海外進出戦略の策定に従事。その後、NGOに転じ、アライアンス・フォーラム財団にて企業の新興国進出サポート(バングラデシュやアフリカ・ザンビアでのソーラーパネルプロジェクト、栄養食品開発プロジェクト等)や栄養改善プロジェクトに携わる。
現在は株式会社ルバート代表取締役を務める。組織の変革のためにはスキルとwillの両面からサポートすることが必要という考えから、ビジネススキル研修、そしてコーチングのサービスを提供している。