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部下を変化させたいと願う方へ

≪目次≫
1:部下の成長を願うWさん
2:部下の成長を止めていたもの
3:部下を・組織を変化させるためにやってほしい1つのこと
4:リーダーが持つ影響力

本記事の執筆者
井本仁美イモトヒトミ
  • (一財)生涯学習開発財団認定プロフェッショナルコーチ
  • 国家資格キャリアコンサルタント

 

最近、企業様向けのコーチングプログラムで管理職の方々の参加が増えてきました。そこでよく伺う言葉が「部下を成長させたい」という言葉です。また、丁寧にそのお話を伺う中で、自らも変えていかないといけないという危機感と難しさの葛藤の声も聴かせていただいております。

プレイングマネジャーとして現場業務も兼務している方々も多く、会社からの期待に日々のご自身の業務、部下の育成とやるべきことだけでもキャパシティから溢れそうな状況でも尚、何とかできないかとお話される皆さまの想いを実現させたい、と日々セッションさせていただいております。

今回は「もっと部下を成長させたいと願う方へ」Wさんのセッション事例をベースにその実現に向けた一つの方法をお伝えしたいと思います。

1:部下を成長させたいと願うWさん

IT関連企業に務める管理職歴7年のWさん。

業務の変化スピードが増す中、部下との仕事に対する意識にジェネレーションギャップも感じ、育成難易度も上がっているとお話されます。
1on1の時間を取っているけども2ヶ月に1回が限度、それほどあらゆる業務に日々追われている中、このままでいいのかという気持ちを見過ごせなくなり、立ち止まって考えたいとコーチングセッションに参加されました。

Wさんが最も悩んでいたのは、ある1人の部下育成でした。
Wさんから見ると、成長がとても遅いと感じているとお話されます。具体的には、業務でアドバイスしても即行動しない、お客様から大切なキーワードが出ていたのにキャッチせず、Wさんにも報告・相談がなくフォローもできずにいるとのことです。
そこでWさんはお客様状況を細やかに共有してもらえるよう取り組んでいるものの、マイクロマネジメント気味になっていないか、本当にこれがベストなのか、実は腹落ちしていないと吐露されます。
そこで、様々なお気持ちを伺った後、私はこんな質問をしました。

私:
「部下へアドバイスする前に無意識に行っている自分への質問があるなら、それはどんなも
のですか?」

2:部下の行動を止めていたもの

そんな私の質問にWさんは沈黙しながらも時間をかけて答えてくださいました。

Wさん:
「自分へ質問と言われても難しいですね・・・・・質問というのは難しいですが、その時
考えていることは、この状況からどうプラスにもっていくかということですね。」

Wさんが言葉にした、この“プラス”とは、誰にとってのプラスなのでしょうか?
その質問をWさんにも投げかけました。

Wさん:
「あ・・・そうですね。もちろん部下のためですが、正直私のためでもあります。」

私:
「そうなのですね。部下のためのプラス、ご自身のためのプラス、その他にもございますか?」

その後、Wさんは“誰にとってどういうプラス”を考えているのかを詳しくお話しくださいました。
それは、お客様のため、部署のため、チームのためといったもので、お客様は現在こういう課題感を持っている、部署やチームの目標はこういうものがある等、それぞれの具体的な内容も挙げてくださいました。
また、新しく着任された理論・結果主義のWさんの上司の意見や立場もいつも頭にあるのだと本音もお話しくださいました。

結論、部下の方へアドバイスする時には、様々なステークホルダを頭に浮かべ、最短で状況をプラスに持っていく方法を考えていたというのです。

そのアドバイスはきっとあらゆる方にとってメリットがあるものであったと私は思います。
ではなぜ、そのアドバイスをWさんの部下は実行できず行動を止めてしまっていたのでしょうか。答えはシンプルです。Wさんのアドバイスは部下の方が納得できる、または実行できる内容ではなかったということでしょう。コーチ視点で考えると、Wさんが無意識にしていた自分への質問から導き出したアクションは、部下の成長や変化を促すことはできなかったということだと考えます。

3:部下を・組織を変化させるためにやってほしい1つのこと

Wさんがしたアドバイスやそこに至った考えに間違いなど一つもありません。
その上で、私はこう質問させていただきました。

私:
「では、同様の困った状況の中で、部下の成長のみに焦点を当てたサポートをしようと思っ
た時、どんなことを自分の中で考えますか?」

Wさん:
「・・・」

長い沈黙が続きました。そして、こうお話されました。

Wさん:
「部下がやりたいことをどう実現していけばいいのか?とかでしょうか・・・。」

私:
「では、仮にその質問をご自身の中でした時に、その後どのような行動に繋がりますか?」

Wさん:
「あぁ・・・(少し考えが晴れてきた表情をされる)
 たぶん、部下と一緒に考えますね。今こういうことが起きているけど、そもそも部下はど
う思っているのかを聴いて、部下が納得できる行動を一緒に考える感じです。」

私:
「そこで一緒に答えを出せたとするならば、部下の方にどんな変化が表れそうですか?」

Wさん:
「自分で考えて行動する変化は表れると思います。あとは、困ったら相談してくれる気もします」

いかがでしょうか。
自問する内容を変えたことで、Wさん自身そして部下の行動も変わっていく姿が描くことができました。Wさんはセッションが進むにつれて、当初は部下の成長というポイントが薄れていた、正確にはその他のことでも頭がいっぱいで部下の成長にフォーカスできていなかったと気づかれました。

その後のWさん。
部下の方との会話で、部下の方が業務で困っていることや、お客様と対峙する中で部下の方なりに考えていることも聞くことができ、少し部下の方の見方が変わってきた部分があると、Wさんはその後のセッションでお話くださいました。

「部下の成長が遅い」と言っていたWさん自身も変化していることが分かります。

あなたは部下へアドバイスする時、どんなことを自問していますか?
Wさんのような課題感をお持ちの方がいらっしゃいましたら、部下の成長を支援をしていくためには、どんな質問へと変化していけるとよいのか、是非考えてみてください。

4:リーダーが持つ影響力

さいごに、管理職であるリーダーである皆様にもう一つ伝えたいことがあります。
ここまでは個人の方の問いを扱ってきましたが、リーダーである皆様には組織における共通の問いの力にも着目いただきたいと思います。

私が株式会社リクルートエージェント(現:株式会社リクルート)に在籍していた時、上司や先輩から幾度にも渡って投げかけられていた問いがあります。それは「あなたはどうしたいの?」です。

同期や先輩、後輩も口癖のように「あなたはどうしたいの?」と言っているのが日常の中、私自身もこれを問われ続けることで、あらゆる場面で“自分はどうしたいのか?”を無意識に考えるようになりました。一つの共通の問いが組織や個人の価値観として確立されていくということです。私は、その共通の問いが株式会社リクルートの強みである自走できる組織創りに繋がっているのだと考えます。

あなたの組織ではどんな共通の問いや口癖がありますか?
また、それがどういう組織の価値観に繋がっていますか?

私達は、何気なく発している言葉に知らず知らずのうちに大きな影響を受けています。
組織を牽引するリーダーには、是非この組織における共通の問いにも目を向け、組織が目指す姿にあった問いを使って欲しいと願います。

今回は個人の中にある無意識の問い、そして組織の共通の問いの力についてお伝えしました。いかがでしたでしょうか。
この内容が、少しでも皆さまのお役に立てれば嬉しいです。

 

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【本記事の執筆者】
井本 仁美

㈱リクルートエージェント(現:㈱リクルート)にて法人営業、新サービス拡充のプロジェクトリーダー、育成に従事し、その後人事系フリーランスへ転身。法人・個人向けキャリアカウンセリング、コーチング業務、研修講師、採用業務、ベンチャー企業での企画業務等を経験。

キャリアコンサルタント×コーチングの知見を活かし、課題解決しながらポジティブアプローチで目標達成を伴走することや、クライアントが発する言葉を大切に扱いその方が持つ価値観や考えの言語化が得意。自己肯定感が上がり、その人らしさに気づくことで自己実現に向けて行動を起こせるセッションと定評あり。

・(一財)生涯学習開発財団認定プロフェッショナルコーチ
・国家資格キャリアコンサルタント