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アフリカでボロい車のハンドルを握る~リーダーシップを育むとは

ルバート代表の松上です。前回はシェアドリーダーシップについて書きました。今月は自分のリーダーシップの原点になっているアフリカのザンビアでの経験を書きたいと思います。

 

無茶なミッション

NGO在籍時代の2011年2月~5月、私はアフリカ・ザンビアに3か月間の単身での長期出張を経験しました。その時に与えられたミッションは以下の通りです。

① 現地での法人の立ち上げとオフィス開設・スタッフ採用
② 現地でのパートナーNGOの発掘と栄養改善プロジェクトの立ち上げ
③ 現地のマイクロファイナンス機関の調査

これを1人で全て行うという今考えるとかなり無茶なものでした(笑)
さすがに1人で進めるにはテーマも大きいので東京オフィスに方針などを確認しながら進めていきました。当時はまだスカイプなどでのコミュニケーションも不安定だったのでメールベースでのやり取りが中心でした。

 

車を運転する決断

当初は東京オフィスに方針などを確認しながら進めていましたが、日本で3月11日に東日本大震災が発生したこと、また、現地の状況が東京に伝わりにくいこともあり、徐々に日本からの指示が少なくなっていきました。

現地側で物事を動かすためには活動量を上げていかなければなりませんが、車社会のザンビアで車なしで業務をするのはかなり無理があります。

そんな中、現地で世話をしてくれていたババールさん(ザンビアの食品会社の社長)が「ザンビアで車なしで仕事するのは大変でしょ。うちの車を使ったら?」というありがたい提案をしてくれていました。

ただ、東京オフィスからは「車の運転は危ないので絶対にしないこと」という指示を受けていた私は「東京オフィスから止められているから」と断っていました。

するとある時、ババールさんから「ジュン、東京オフィスがどうこうではなく、ここにいる君がどうしたいかなんだよ?」と珍しく真顔で言われたのです。

その時になぜか私は「確かにその通りだな、ミッションを果たすためにここで判断するのは自分だな」と妙に納得して、東京オフィスに黙って車を運転することを判断したのです。今思ってもよくそんな勝手なことをしたなと思うのですが、当時はミッションを達成するために必死だったのだと思います。

 

ハンドルを握る

ただ、日本とは勝手が違い、そこからが大変でした。現地で日本の免許証の翻訳が必要だったので、日本大使館に公式翻訳証明書を出してもらう必要がありました。次に交通局での許可証の取得も2週間以上かかりました。(時間がかかったのは、交通局に袖の下を渡さなかったためということは後から知りました)

ここまで準備をして、ババールさんからいざ車を借りる段になって判明したのが、車がボロボロだということでした。ボロボロというのも日本で想像するレベルとは違っていて、30年ものくらいのスバルのマニュアルの中古車でした。そして何よりサイドミラーが片方しかありませんでした。ただ、贅沢は言えないのでこの車を借りることにしました(涙)

次の問題は私がマニュアル車を運転するのが10年ぶりくらいだったということです。仕方ないので、ゲストハウスの駐車場でゲストハウスのスタッフに半クラのやり方などを教えてもらいながら、何度もエンストしながら運転の練習をして、最低限の運転のレベルに達して、ようやく準備が整いました。

そして、その日はやってきました。パートナー候補のNGOのオフィスが目的地でした。ドキドキしながら初めて道路に出て、慎重に慎重を重ねて運転し、そして無事にオフィスに到着することができました。やり切ったというちょっとした達成感でした。

そこからは車を使うことによって一日に4件くらいアポをこなすことができるようになり、劇的に業務を効率的に進めることができるようになりました。

このザンビアでの長期出張の時に私は「自分で自分の目標と行動を決め、人を巻き込み、工夫して進める」という自分に対するリーダーシップ発揮のベースを学んだのですが、実はそれはこのボロい車のハンドルを握った時にスタートしていたような気がするのです。

メタファーではなく、行動することがマインドを変えるということはよくあると思います。私のマインドは、車のハンドルを握ることで、自分の人生のハンドルを握ろう、というマインドへ文字通り変化したのだと思います。

 

終わりに

会社の指示に従わずに自分の判断で車を運転するという判断をしたことは決して褒められたことではないと思います。決してこういうことをすすめているわけではありません。ただ、誰かに言われたからやるではなく、会社のビジョンのために自分で決めたから組織のやり方に反してもやるんだという決意はリーダーシップにとって、とても重要なことのような気がするのです。

2023年3月22日にマネジメントとリーダーシップに関するセミナーを予定していますが、その中でもこのアフリカの話もからめてお伝えしたいと思います。ご興味ある方はぜひご参加ください。セミナー自体は今必要とされるマネジメントスタイル、マネジメントとリーダーシップの違い、グローバル視点でみた日本のリーダーシップなどについてお話しする予定です。