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女性管理職育成を加速するヒント:マインドセットの変化を促すコーチングと環境づくり


≪目次≫
1.はじめに
2.マインドセットの変化を促すコーチングのプロセス
(1)無意識のバイアスに気づく
(2)自分らしい管理職のイメージを持ち、実践することで自信をつける
3.施策が効果を上げるために必要なポイント
4.まとめ

本記事の執筆者
重次 泰子シゲツグ ヤスコ
  • 国際コーチ連盟認定コーチ(PCC)
  • GALLUP認定ストレングスコーチ
 

1.はじめに

女性活躍推進法で数値的な目標を定める必要から、大企業で女性管理職を増やすための取り組みが活発化しています。
しかしながら、当事者である女性の皆さんからは、「管理職になる自信がない」「管理職になったとしても、実力ではなく女性枠とみなされ、軽く扱われるのではないか」「子育てが大変な中、男性管理職のように長時間労働は無理」など戸惑う声も多く聞かれます。

コーチとして5年ほど、企業の施策としていろいろなケースに携わらせていただく中で感じるのは、管理職候補の女性の皆さんにとっての大きな壁は、「私なんて」と自信がない状態から、「やれるのではないか、やってみよう」というマインドセットの変化であり、それをクリアすると、新しいスキル取得の挑戦、周りへの働きかけの積極化などの行動変容が起きるというパターンが多いことです。

このマインドセットの変化が起きるには、対話と実践と繰り返しながら、ある程度時間をかける必要があるため、継続的(6か月程度)なコーチングセッションを柱として、定期的な集合研修やグループセッションを組み入れるプログラムが効果的だと感じます。

今回はマインドセットの変化を促すコーチングセッションでのプロセスと、さらに効果が上がるために必要と考えるポイントについて、整理したいと思います。

2.マインドセットの変化を促すコーチングのプロセス

このプロセスで必要な要素としては、自分の中で長年培ってきた「こうでなければならない」という無意識のバイアスに気づくこと、その上で、自分らしい成功パターンを探求し、実践しながら「やれる」という自信を持つこと、の2つだと考えます。

(1)無意識のバイアスに気づく

管理職候補の皆さんから多く聞かれるのが、「自分は管理職になるタイプ(器)ではない」という声です。
セッションさせていただく私から見ても、着実に成果を上げていて、穏やかで、人の話をよく聞けるとても素敵な方が多いのですが、とにかく自信がない。

「管理職になるタイプとは?」との問いに対して、

「トップダウンで決断し、チームを引っ張ることができる」
「弁が立ち、説得力があってカリスマ性がある」
「すべてにおいて部下よりも優秀でなければならない、部下よりも詳しい知識を持っていなければならない」

この辺りの思い込みについては、そうでない管理職はいないのか、引っ張るリーダーのメリットや盲点を探りながら、リーダーシップには様々な形があること、そして自分自身の思い込みが行動に歯止めをかけていることに気づいていきます。

一方で、自分だけでは解決できないこともあります。

「管理職とは、長時間労働ができなければならない(早く帰る私にはできない)」
「常にプライベートよりも仕事を優先させなければならない(子供が急に熱を出すことがあるので私にはできない)」
「子供が欲しい、妊娠したら周りに迷惑がかかるのに管理職を希望するのは勝手と思われる」

今管理職候補の女性の皆さんは、言葉を選ばずに表現すると、(補助的でなく)主たる労働力、子どもを産む女性、の両方の役割が求められ、その解を自分の努力で導き出さなければならない、という強い思いがあります。
企業側がどのように女性たちに活躍してほしいのか、明確なスタンスを示すことや、上司の方の関わりがとても重要だと感じます。

以前、ある企業の人事の責任者の方が、集合研修の際に、「男性上司と同じようなマネジャーにならなければという思い込みを捨ててほしい。女性の皆さんが管理職になることで会社が良い方向に変わると思っている。私たちはそれを応援する」という主旨の話をされていました。男女関わらず、会社全体でこうした意識を何度も繰り返し共有することで、無意識のバイアスが取り除かれていくと感じます。

(2)自分らしい管理職のイメージを持ち、実践することで自信をつける

自分の思い込みに気づいたら、そのあとは自分らしい管理職、リーダーのイメージを持ち、実践しながら「やれる」という自信につなげるプロセスとなります。

私は自己理解のツールとしてストレングスファインダーを用い、自分の傾向性(才能)について、うまくいくパターンと、もったいないパターンなどの両面から探求しています。

「私は○○ができない」など、自分が弱みだと思っていることも、実は才能の裏返しであり、うまくいくパターンに変換すると、強みになることに気づいていきます。

また、組織から期待されているミッションがあった場合には、上司と同じアプローチだけでなく、自分の才能を活かしたアプローチがあることを認識し、実践することで、「上司と違ってもよい」、「自分らしく取り組むアプローチを周りに理解してもらえばよい」という自信につながっていきます。

3.施策が効果を上げるために必要なポイント

管理職候補、もしくはすでに管理職として活躍されている女性の方たちを拝見して思うのは、職場に同じ立場の人がいない、先輩にロールモデルがいないなど、アウェイ感を抱えている方が多いということです。
コーチのように一番の味方であり、応援してくれる存在がいることはもちろんですが、職場においても理解者がいること、一緒に悩みを打ち明けられる仲間がいることが、大きな力になると思います。

集合研修で出会った同じ立場の仲間と定期的にネットワーキングの関りを持つこと、コーチも交えて数人で、今チャレンジしていること、うまくいっていること、いかないことを忌憚なく話し合うグループセッションも有効だと思います。

悩んでいるのは自分だけではない、という安心感があると、頑張っている人のアイディアや、取り組みを学び、自分もやってみよう、周りの人に自分から働きかけよう、という意識が高まり、アクションが起きると感じます。

4.まとめ

今回は、女性活躍で有効と思われる施策について述べさせていただきました。
女性だけがこのような施策を受けることに男女問わず抵抗感を持つ人も多いと思いますが、様々な理由で女性の方が管理職になる自信がない人が多い、という事実がある中で、コーチングを主とした施策により、時間をかけて無意識のバイアスや自分らしさを自覚するプロセスは、これから女性たちが活躍できる環境を整えるうえで欠かせないと考えます。

 

【本記事の執筆者】
重次 泰子

日本銀行で国際金融調査、為替のディーリング業務に約10年従事。4年間の子育て期間を経て、三菱総合研究所で金融経済のリサーチ業務に計13年携わる一方、「メンバーの幸福度とチームの成果の両方を引き上げる仕組みづくりはないか」という問題意識を持ち、コーチングを学ぶ。 現在は個人とチームのリソースを最大限に活かし、成果を上げることを目標に、ビジネスパーソン向けのコーチングや、企業研修などを中心に活動中。 個人の強みにフォーカスし、その人らしさを活かして成果を上げるコーチングに定評がある。

・国際コーチ連盟認定コーチ(PCC)
・GALLUP認定ストレングスコーチ