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ルバート講師丸尾武司による『資料添削での気づき』

今回はルバートが主催する資料作成講座の講師をつとめる丸尾武司による『資料添削での気づき』について紹介いたします。


ルバート講師チームの丸尾です。

私は、戦略的プレゼン資料作成講座の1日目で課される宿題の添削を担当しています。添削は、講師チームでクラス全員分を分担して行い、最終的に松上さんと私で監修しています。講師間で添削の品質基準をそろえるため、「チェックリスト20」というルバート独自のチェックリストをもとに添削しています。

添削の目的は、気づきにつながるFeedback

資料作成スキルの上達のためには「Input→Output→Feedback」のサイクルを回すことが重要だと考えており、受講者にとって学びにつながるFeedbackを提供できるよう取り組んでいます。

私が意識していることは、「できていること」と「できていないこと」の両方をお伝えすること。「できていないこと」については、それを補う形でAfterのスライドを作成します。Afterのスライドは、オリジナルの原型をできるだけ活かし、講座で学ぶ知識を100%活用すれば、ここまでは作成できるという姿をお見せすることを心がけています。具体的なスライドを示すことで、次から何をどうすればよいかという「実践的なInput」にしていただくためです。一人一人の個別スライドについて、丁寧に添削作業を行うのは、この講座ならではの特長だと思います。


 


 

2つのわかりやすさ 「読めば、わかる」と「見れば、わかる」

多くのスライドを添削する中で気づいたことには、わかりやすさには2つの側面があることです。1つは、意味内容のわかりやすさもう1つは見た目のわかりやすさ(見やすさ)です。

前者は、メッセージを支える情報がそろっており、要素間の論理や話の筋道がつながっていること。いわば「読めば、わかる」状態です。資料作成の思考段階で「誰が」「誰に」「何をしてもらいたいのか」という大目的にあわせて、意味のある切り口や必要な要素を抽出し、流れを吟味することが大事になります。

それに対して、後者は情報が整理されて表現されていること。すなわち「見れば、わかる」状態です。図解表現は、要素間の関係性や型本来が持つメッセージにより、「見れば、わかる」状態をつくることを手助けするものだと考えています。

普段、忙しいビジネスパーソンにとって時間は貴重なもの。迅速なアクションに結びつけるための「見やすい」スライド作成について、添削でよくある修正ポイント、①小見出しをつける、②文字強調する、③ピクトグラムを活用するの3点からコツをお伝えできればと思います。

① 小見出しをつける

多くの受講者が、1日目に学ぶ図解の型や箇条書き表現を使ってスライドを作成されていています。さらにわかりやすく表現するために、小見出しの活用をおすすめしたいです。

小見出しでボックス内の情報を小分けに

例えば、「フロー型」で図解する場合、ボックス内の情報は、種類や質が異なるものが混在していることが多いです。この状態では、情報をしっかり読まないと、内容が理解ができません。ボックス内の情報を、例えば、打ち手の内容やメリットなど意味内容ごとに、小見出しでくくりだすことがポイントです。小見出しによって、情報が小分けされ整理されているので「見れば、わかる」状態であり、意味内容は「読めば、わかる」状態にしやすくなります。

小見出しは情報収集にも役立つ

小見出しでくくり出すことは、情報収集にも役立ちます。フローの流れの軸と、ボックス内の情報をくくり出した軸の2軸のマトリクス型で、ボディを図解することになります。軸と軸の交差する情報を見ると、情報の抜け漏れがある部分が浮かびあがってきます。添削では、小見出しを使った表現に修正する過程で、そうした弱い部分を補強することもしばしばあります。情報がそろった強い主張ができるようになります。



文字強調する

文字が多いスライドには、文字強調をおすすめしています。文字が多いスライドは、意味内容は、情報が豊富でわかりやすくなるのですが、その反面、見やすさの点で、文字がビジーで見づらい印象を与えてしまいがちです。第一印象で読みづらい印象を与えてしまうと、その後、資料を読み込もうとした時に、なかなか頭に入りにくい状態をつくってしまいます。

文字強調でポイントへ視線を誘導する

それを解決するために、文字強調を活用します。文字強調は、意味内容は変わりませんが、見るべきポイントに視線を誘導し、見やすさを改善できます。文字強調は、文字色を強調色に変えることや文字サイズを大きくするなどの簡単な作業で可能です。講座では、文字強調は、少ない労力でスライドの品質を高めることができるので「コスパが良い」とお伝えしています。


③ ピクトグラムを活用する

ピクトグラムの活用でデザイン性を高める

先ほど文字だけのスライドでの見やすさ改善の手法として、文字強調をお伝えしましたが、もう一つの手法としてピクトグラムの活用があります。図解の技術を駆使しても、文字や論理だけでのスライドでは、どうしても「無骨さ」や「無味乾燥さ」が残ってしまいます。

ピクトグラムには、絵や画像ならではのイメージで伝える力やスライドのデザイン性を向上させる効果があります。ピクトグラムを挿入することで、「乾いた」印象のスライドに、「みずみずしさ」を与えてくれ、第一印象のとっつきにくさを緩和してくれます。

実は、私もこの講座を受講するまで、意味内容に無駄のない「筋肉質な」スライドが良いと考えており、ピクトグラムは「お飾り」のように考えていたため、あまり活用できていませんでした。しかし、ピクトグラムの活用を学んでからは、「読めば、わかる」前に、まずスライドを目にしたときのストレスを低くすることが大事だと気づきました。その効果を受講生の方にも実感していだけるように、添削作業では、文字や図解だけのスライドには、ピクトグラムを追加した「Afterのスライド」を作成するようにしています。

ピクトグラムの色と配置

ピクトグラムを活用するときにコツがあります。それは色と配置です。添削で見かけるのは、ピクトグラムを挿入されている点は良いのですが、色がWebサイトからダウンロードした黒色のままというケースです。色をスライドのベースカラーとあわせると、スライドの色が統一され安定します。複数の異なるサイトから取得すると、色の濃淡が微妙に異なります。このような場合、色を調整すればよいのですが、基本は同じサイトから取得することをおすすめしています。

配置については、ボディの図解の外に配置されるケースもあるのですが、図解の中に挿入することで、構造的な表現にしやすくなります。対比型や表型のケースでは、表頭か表測のどちらかに挿入するとよいと思います。すべてに入れると、ビジーな印象になってしまいます。

メッセージにあうピクトグラム

受講生の方から、メッセージにピッタリのピクトグラムが見つからないが、どうしたらいいか?という質問をいただくことがあります。例えば、対比型の評価項目で出てくることが多い「メリット(お金や業績向上)」や「費用」」や「時間」などの一般名詞のピクトグラムは、比較的検索しやすいのですが、動詞は検索キーワードを幅広く出す必要があります。

例えば、「頑張る」をピクトグラムで検索すると、「ガッツポーズ」や「汗をかいて走っている姿」、「机に向かう姿」などの人物描写のほか、「歯車」「右肩上がりのグラフ」「メダルやトロフィー」など関連するイメージに広げてみるとよいでしょう。

冒頭の質問に対しては、ピクトグラムは、あくまでイメージを伝えるものですので、完全一致でなくてもよいとお伝えしています。理想のピクトグラムを探すあまりに、作業時間が超過してしまうのは避けたほうがよいためです。使用したピクトグラムはストックを持っておくと、検索の手間がはぶけて便利です。


おわりに

添削は、クラス全員に対して行います。お手元に添削スライドが届いた際には、ご自分の分だけでなく、他の受講生の添削分も、どこを修正しているのか考えながら目を通していただくと、「モノを見る目(審美眼)を養うこと」や「自分の引き出しを増やすこと」につながると思います。