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【講師紹介】『資料作成と僕~丸尾武司~』

ルバートが主催する資料作成講座の講師陣を紹介するシリーズ2回目として、丸尾武司をご紹介します。

非鉄金属メーカーの海外事業管理・営業に従事した後、現在勤務する半導体製造装置メーカーにて新製品の企画立案等を経て、現在人材育成に従事。BtoBのメーカーでの営業提案や新製品の企画業務を通じて、人や組織を動かすための資料作成の重要性を強く実感する。またビジネススキルを学んだことで、人生を切り開くことができたという経験から、「学べば、人生が変わる」という思いのもと、ルバートでは、主に2日間講座の添削や資料作成CAMP講座を通じて受講生の学びのサポートを行っている。


学んだことを、他の人のために使うことは大きな意味がある

―――ルバートで資料作成講座の講師を受け持つようになったきっかけは何ですか

私は2015年9月に、顧客への提案スキル向上のためにルバートの主催する「戦略的プレゼン資料作成講座2日間集中講義」を受講しました。その時に、講座終了後、松上さんから講師のお手伝いをしていただけないかと声をかけていただいたことがきっかけです。

私はこれまで数々の資料作成に関する本を読んだり、セミナーを受講してきました。その中でもこの講座は、資料作成に必要な①思考、②表現(定性・定量スライド)、③操作のスキルセットを一気通貫で学べ、その上自ら作ったスライドの添削まで行ってくれるという卓越した内容で、とても感銘をうけました。

この講座を受講してみて資料作成の道が開かれたような気がしました。そこで、このスキルを私の様に資料作成に悩む人に広めたいと思うようになりました。学んだことを自分のために使うのではなく、他の人のために使うことは、より大きな意味があるのではないかと考え、講師の業務をお引き受けすることにしました。

実は、新人営業マン時代は、仕事でなかなか成果を出すことができませんでした。受注ゼロを経験したときは、自分が惨めに感じることもありました。そういう状況を変えるべく、論理思考やマーケティングなどのスキルを学び、仕事で実践し、3年後には売上を4倍に成長させることができました。社内でもトップ営業として表彰いただき、その後のキャリアも大きく開けました。私にとってビジネススキルは、いわば自分の人生を切り開く武器でした。

学び続けるなかで、この資料作成講座に出会いました。講座で学んで、資料作成は「思考」と「表現」を組み合わせた「書くコミュニケーション」を高めるスキルだと気づかされました。このスキルのおかげで、営業や新製品開発での問題解決や多くの人と情報共有し立ち向かう場面で助けられました。資料作成は、仕事を前に進めるための重要なスキルだと感じています。

資料作成が上手くなりたいと熱心に学ぶ方々が多くいらっしゃることを知り、当時の自分の姿と重なりました。資料作成スキルを身につけることが、仕事での成果創出につながり、もしかしたら人生が変わることにつながるかもしれない。そこに私が学んできたことがお役に立つならば、それは私個人の仕事やスキルアップよりも、大きな意義があると考えています。ちなみに、現在の勤務先では副業は禁止ですので、ボランティアという形でお手伝いしています。

 

自己流でなんとなく感覚的に作っていた資料

―――もともと資料作成は得意でしたか

いいえ、得意ではありませんでした。一言に「資料作成」といっても、会社によってツールやスタイルが異なりますよね。私が新卒で入社した企業では、Excelを使ってA3サイズ1枚にまとめることが標準的で、PowerPointは使われていませんでした。PowerPointを用いた資料作成については、会社のテンプレートや研修もなく、社員がそれぞれ自己流で作っている状態でした。

当時の私には、PowerPointによる資料作成のスキルも、資料の良し悪しの判断基準もありませんでした。ストーリーラインは、自分が話したいことを何となくスライドに落としている状態でした。スライド作りでは、文字フォントの種類や大きさ、図形の形、レイアウト、色の使い方などで迷っていました。わかりやすくしようと修正を試みるのですが、やっていることが感覚的で自信が持てませんでした。そもそも正しい姿が理解できていないので、どこがダメか、どう修正すればよいのかわからず、結局時間ばかりかかってしまい、非効率なことを繰り返していました。

 

参考文献をあさり、分かりやすい資料を真似して作るから始めてみた

―――資料作成についてどのように勉強していきましたか

当時は、自分の「型・ルール」がない状態でしたので、上手な人の資料を真似することから始めました。当時「ロジカルプレゼンテーション」の著者の高田貴久氏のセミナーを受講する機会があり、テキスト資料の文字フォント、使う図形の種類、ベースカラーをお手本にして作っていました。内容はともかく、見た目がわかりやすくなり、資料を作るのに迷う時間が減ったことを覚えています。

次に、資料の中身も無駄のない構造的なスライド作成ができるようになりたいと思い、資料作成の本をたくさん読みました。特に私がスライド作成において重要だと感じたことは以下の3点です。

  • 良いスライドとは、①メッセージがあること、②ボディが構造的であること、③メリハリがあること
  • 構造的なスライドを描くためには、意味内容(論理)がMECE(ミーシ―、Mutually Exclusive Collectively Exhaustive:モレなくダブリなく)であること
  • スライドを手元から離して見たときに、構成の大きな塊がわかるように表現する

このような大事なポイントを学び、お手本となるスライドをたくさん見て、自分なりにコツを考えて学んでいきました。

 

知識を蓄えることはゴールではない。インプット・アウトプット・フィードバックを繰り返して「使える」資料作成スキルを習得し、「美意識」を持って磨き続ける

―――資料作成の上達に必要なことは何ですか

「Input→Output→Feedback」の3つのサイクルを何度も行うことです。

「Input」とは、資料作成における型・ルールを習得することです。

「Output」とは、型を踏まえて実際にスライドを作ってみることです。資料作成は、「実務で使える」ことが大事です。本を読んだりセミナーの受講を通して知識を蓄えることは、ゴールではありません。例えば、効率的な操作の習得には、ショートカットキーを覚えるだけでなく、実際に手を動かすことが必要です。1枚のスライドを、「図解の型」を使って作るだけでなく、他の人のスライドをよりわかりやすく修正してみる。こうした実践を通じて「型」を習得し、「美意識(こだわり)」も磨かれます。「型」が理屈で理解するものだとすると、「美意識(こだわり)」は感性・センスです。上達するには、何を美しいと感じるか、どこにどこまで凝るかという「こだわり」が大事になると思います。同じスライドを見ても、これで良しとするか、ダメとするかは、究極的には「型・ルール」を超えて「美意識(こだわり)」によると考えています。

「Feedback」とは、相手から作ったスライドについて意見をもらうことです。Feedbackをもらうときに重要なのは、表現したことが相手に的確に伝わったのかを聞き取ることです。作るときのこだわりや頑張りを認めてもらおうと説明しがちになりますが、重要なのはそこではありません。自分が伝えたかったことと相手が理解した内容の差分や受け取り方の違いを知ることが生きたInputとなり、思考を深めることや視野の広がりにつながります。

 

資料作成を通じてリーダーシップを発揮する訓練になる

―――資料作成の重要性についてメッセージをお願いします

私はB to Bのビジネスに携わる中で、案件の規模が拡大し、難易度があがるにつれて多くの人が関わってくるので、資料作成は重要だと感じています。例えば、大勢のメンバーが集まる会議では、議論に入る前に、メンバー間の共通認識をそろえることが大事になります。そうしたときに、資料の「見える化」という強みにより、案件や情報の全体像を一気に示すことができます。

全体像を押さえつつ、部分ごとに小分けして説明することで、参加メンバーの個々の役割やアクションを理解してもらいやすくなります。また図解にすることは、複雑な情報や因果関係をわかりやすくし、短時間でも共通理解を得やすくなります。資料は残るものなので、会議ごとのつながりを保つことや欠席したメンバーとも情報共有できます。こうなると、資料が、会議での口頭説明の補足資料ではなく、メンバー間の情報共有や行動を束ねる要としても機能します。資料作成を通じて、役職や経験に関係なく、リーダーシップを発揮する訓練にもなると思います。